前職で長野県のお客様を担当していた時のことを、今でもよく覚えています。外壁の上の方はきれいなのに、道路に面した腰壁のあたりだけ白く濁ったようになっていて、最初は汚れかと思ったそうなんですよね。ご本人も「毎年冬になると同じ場所が汚れる気がする」と、うっすら気づいてはいたものの、原因までは分からずにいらっしゃいました。
雪の少ない地域で育った私自身、正直なところ最初は塗料の劣化との区別がつきませんでした。ですが現場を見比べていくうちに、道路際の低い位置に集中して傷みが出ている家がいくつもあることに気づいたんです。
融雪剤の主成分は塩化カルシウムや塩化ナトリウムです。除雪車や通行車両のタイヤが跳ね上げることで、道路に面した外壁の下部に細かい飛沫として付着します。これが乾いては再び湿り、を繰り返すことで、塗膜の表面にじわじわとダメージが蓄積していくんですね。
金属部分への影響も見逃せません。フェンスや配管の金具、給湯器の脚といった部材が、気づかないうちに錆び始めていることがあります。塗装だけでなく、こうした付帯部にも目を向けてほしいと思っています。
「潮風の劣化と同じですか」と聞かれることがあるのですが、少し性質が違うと私は感じています。潮風は風向きや高さに応じて壁全体に広く影響が及ぶのに対し、融雪剤の影響は道路からの跳ね返りが中心なので、地上から1メートルほどの範囲に集中して現れる傾向があるんです。だからこそ、家全体を見て「まだ大丈夫」と判断してしまい、足元だけが先に傷んでいることに気づきにくいのだと思います。
もし道路に面した壁の下の方だけ白っぽい、あるいはざらついていると感じたら、その部分だけでも点検を依頼してみてください。全面塗り替えが必要とは限らず、下地の状態次第では部分補修や、耐塩害性のある下塗り材への変更で対応できることもあります。
業者に相談する際は、「融雪剤の影響が気になる」と具体的に伝えていただくと、下部だけ入念に診断してもらいやすくなります。フェンスや室外機の脚など、金属部分の防錆処理まで一緒に見てもらえるかどうかも、確認しておくと安心だと思います。