前職で外壁塗装の窓口をしていた頃、静岡県のあるお客様からお電話をいただいたことがあります。
「3年前に外壁と一緒に、2階のベランダの木の手すりも塗ってもらったんです。外壁はまだきれいなのに、手すりだけ皮がむけたみたいにボロボロで。これって手抜きですか」
声に、がっかりした気持ちと少しの怒りがにじんでいました。業者さんに確認すると、手すりにも外壁と同じ系統の、表面に膜を作るタイプの塗料を使っていたそうです。手抜きというより、木の性質に合っていなかった。そういうお話でした。私はそのとき初めて、木の部分は外壁とは別ものとして考えないといけないんだと身にしみて感じたんですよね。
モルタルやサイディングと違って、木は湿気を吸ったり吐いたりしながら、伸びたり縮んだりを繰り返しています。雨の多い時期には膨らみ、晴れが続くと痩せる。
そこに硬い膜をぴったり張ってしまうと、木の動きに膜がついていけず、細かいひびが入ります。ひびから入った水は抜けにくくなり、膜の内側で木が湿ったままになって、最後はぺろっと剥がれてしまう。外壁よりも早く傷んで見えるのは、こういう理由が多いのです。
木の塗装には、大きく分けて表面に膜を作るタイプと、木の中に染み込ませるタイプ(浸透型と呼ばれるものです)があります。どちらが正解ということではなく、場所や木の状態、どんな見た目にしたいかで向き不向きが変わります。ただ、外壁と同じ感覚で「全部まとめて同じ塗料で」と考えてしまうと、思っていたより早く手を入れることになりやすい、というのが私の実感です。
見積書を見せていただくと、「木部塗装 一式」とだけ書かれていることがよくあります。
これだと、何を使って、何回塗って、下地をどう整えるのかが分かりません。木部は古い塗膜をきちんと落とす「ケレン」という作業がとても大事で、ここを軽く済ませると、どんな良い塗料を使っても長持ちしにくいんですよね。
なので、見積もりの段階で次のようなことを聞いてみてください。木の部分にはどんな種類の塗料を使うのか。古い塗装はどこまで落とすのか。次の塗り替えはだいたい何年くらいを目安に考えればいいのか。
しっかりした業者さんほど、ここを丁寧に説明してくれます。逆に「外壁と同じで大丈夫ですよ」で話が終わってしまうなら、もう一歩だけ踏み込んで聞いてみる価値はあると思います。
もう一つ、お伝えしておきたいことがあります。
木の部分は、どんなに丁寧に塗っても、外壁より早く色あせたり傷んだりしやすい場所です。日当たりや雨の当たり方で差が大きく、南向きのウッドデッキなどは特にそうです。だから外壁の塗り替えサイクルにまとめるより、木部だけ少し短い間隔で軽く手入れする、という考え方のほうが、結果的に家全体がきれいに保てることが多いんです。
先日も、千葉県のお客様が「木のところだけ、自分たちで2年に1回、浸透型の塗料を塗り足しているんです」と話してくださいました(業者さんに、どの塗料なら重ねて大丈夫か事前に聞いておいたそうです)。築20年近いお宅でしたが、木の格子がとても良い色をしていて、思わず見とれてしまいました。
木の質感が好きでその家を選ばれた方も多いはずです。その気持ちを長く大事にしてほしいな、と思っています。