前職で外壁塗装の窓口を担当していた頃、忘れられないお電話をいただいたことがあります。長野県にお住まいのお客様で、工事が終わって半月ほど経ってから「網戸が真っ白になっているんですけど」というご連絡でした。よくよく伺うと、塗装のために窓は養生されていたものの、網戸そのものは取り外されず、そのまま塗料の飛沫がうっすらと乗ってしまっていたんです。
お客様は「窓の掃除のときに気づいた」とおっしゃっていて、普段あまり近くでじっくり見るものではないので、発見が遅れてしまったんですよね。業者さんに連絡すると清掃対応はしてもらえたのですが、網戸の網の部分は目が細かく、一度ついた塗料の粒はなかなか落ちきらないこともあります。結局、そのお宅では網戸だけ張り替えることになりました。
養生というと、多くの方は窓ガラスやサッシ、床や植栽のあたりを思い浮かべると思います。実際、そこは業者さんも力を入れて丁寧に養生してくれる部分です。ただ網戸は「外から見えにくい」「開けっぱなしにしている家もある」という事情があって、優先順位がどうしても後回しになりがちなんですよね。
網戸を一度取り外してから作業したほうが仕上がりも安全なのですが、取り外し・再取り付けには手間がかかりますし、見積もりの段階でそこまで細かく言及されないことも珍しくありません。業界に身を置いて長いですが、契約書や見積書に「網戸の取り扱い」という項目自体、なかなか見かけないものです。
先日も、加盟店の担当者から似たような相談を受けました。お客様のほうから「網戸は外して掃除もしてもらえますか」と工事前に聞かれて、初めて対応を決めたということでした。逆に言えば、聞かれなければ特に触れずに進めていたかもしれない、という話でもあります。
網戸は数が多いお宅だと十枚近くになることもありますし、古いものだと外す際に枠が歪んでしまうこともあります。ですから「外して洗浄までしてもらえるのか」「それとも塗装期間中はそのまま残すのか」を、契約前にひとことだけ確認しておくと、あとになって驚くことがぐっと減るはずです。小さなことのようですが、こうした確認の積み重ねが、工事後の満足度を大きく左右するんですよね。
大きな金額が動く外壁や屋根のことばかりに気を取られてしまうのは、無理もないことだと思います。ただ、網戸のような細かい部分への配慮を怠らない業者さんは、他の見えない工程についても丁寧に扱ってくれる傾向があるように感じています。工事の説明のときに、こちらが聞く前から「網戸はどうされますか」と声をかけてくれるかどうか、そんなさりげないやり取りの中にも、業者の姿勢は表れるものです。