外壁塗装というと、見た目をきれいにする工事だと思われがちです。もちろんそれも大きな目的なのですが、私が前職で数えきれないほどの現場に立ち会ってきて感じたのは、外壁のひび割れやコーキングの劣化が、単なる見た目の問題では済まないということでした。
雨水がわずかな隙間から入り込み、木部を湿らせ、そこにシロアリが寄ってくる。破風板や軒天、土台に近い部分は特にそうです。塗装の見積もりだけを見ていると気づきにくいのですが、傷んだ外壁は、実は家の中とつながる入り口になっていることがあるんですよね。普段は目に触れない場所だからこそ、気づいた時にはかなり進んでいた、という話も一件だけではありませんでした。
前職で足場を組んだ現場に立ち会っていた時のことを今でも覚えています。長野県のあるお客様の家で、職人さんが破風板の傷みに気づき、指で軽く押しただけで木がぼろぼろと崩れました。中からシロアリの通り道が出てきたんです。
お客様は最初、何が起きているのか分からない様子でした。塗装をお願いしたつもりが、まさか家の構造に関わる話になるとは思っていなかったのだと思います。夜遅くにお電話をいただき、「このまま塗ってしまって大丈夫なんでしょうか」と不安そうに聞かれたことを、今でもよく思い出します。あの時の声の震えは、資料には残らないけれど、私の中にはずっと残っています。
後日改めて伺うと、お客様は「気づいてもらえて良かった」とおっしゃってくださいました。ただ、その一言の裏には、もう少し発見が遅れていたらという不安も見え隠れしていて、複雑な気持ちになったのを覚えています。
塗装工事の途中でシロアリ被害が見つかると、その場の空気に押されて「ついでに直してもらおう」という流れになりやすいものです。ただ、シロアリの駆除や防除は専門の知識と資格を持つ業者が担うべき領域で、外壁塗装業者がそのまま追加工事として請け負う場合は、少し立ち止まって確認してほしいと思っています。
調査報告書をきちんと出してもらえるか、駆除の方法や使う薬剤について説明があるか、金額の根拠を教えてもらえるか。こうした点は、慌てている時ほど確認が抜けやすい部分です。複数の業者や専門機関に相談してから決めても、決して遅くはありません。むしろ、そのひと呼吸が後々の安心につながることの方が多いように感じます。
業界に身を置いて20年になりますが、シロアリの話は塗装の相談の中でも特に感情が動く場面だと感じています。家の骨組みに関わる話は、施主にとって単なる修繕費以上の不安を伴うものだからです。だからこそ、こちらも言葉を選びながら、丁寧に説明する必要があるのだと思っています。
見積もりを依頼する段階で、屋根や外壁だけでなく、軒天や破風板、床下の湿気まで含めて点検してもらえるかを確認しておくと、後から慌てずに済むことが多いように思います。点検の丁寧さは、そのまま業者の姿勢を映していると私は考えています。
逆に言えば、見積もり書に点検の記載がほとんどなく、価格だけが並んでいる場合は、少し注意深く見てほしいところです。点検を軽く済ませる業者ほど、後から追加費用の話が出てくる傾向を、これまでの相談の中で感じてきました。
弊社では、外壁塗装を単なる塗り替えの案内としてではなく、家の今の状態を知る機会として捉えてもらえたらと考えています。足場を組む工事は、そう頻繁にあるものではありません。だからこそ、その機会に見える範囲だけでも、傷みの原因まで含めて確認してもらえる業者と出会ってほしいんです。
先日も、加盟店から届いた報告の中に、塗装前の点検で軒天の劣化に気づき、シロアリ被害を早い段階で見つけられたという話がありました。すべてがそう都合よく進むわけではありませんが、こうした事例に触れるたびに、点検の目を持つことの大切さを感じます。