北関東のあるお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。外壁の色あせが気になって点検を依頼しただけなのに、点検にきた業者から「このお宅は昭和56年より前の基準で建てられていますね。塗装の前に、耐震診断だけでも受けておいた方がいいですよ」と言われ、その場で診断の予約まで組まれてしまったというお話でした。悪意があったのかどうかは分かりません。ただ、お客様ご本人は「外壁の相談で呼んだのに、いつの間にか家の骨組みの話になっていて、断りづらかった」と戸惑っておられました。
前職で相談窓口をしていた頃も、似たような流れの相談は一定数ありました。塗装の点検と耐震診断が別物だと分かっていても、同じ業者が同じ日に両方を語ると、お客様の頭の中では一続きの話としてまとまってしまうんですよね。
誤解のないように書いておきたいのですが、耐震診断や耐震補強の提案自体を否定するつもりはありません。古い木造住宅であれば、外壁の劣化と同じくらい耐震性が気になるのは自然なことですし、実際に自治体が耐震診断の費用を助成している地域も多くあります。塗装の点検で足場を組む予定があるなら、その機会に耐震のことも一緒に考えるのは合理的な面もあります。
問題は中身ではなく、進め方の方だと感じています。診断結果を待たずに補強工事の金額を先に提示されたり、「今日契約すれば足場代がサービスになる」といった形で、外壁塗装と耐震補強がひとつのセットとして急かされるように提示されるケースです。
以前、九州のあるお客様が、外壁塗装だけのつもりで約120万円の見積もりを取ったところ、耐震補強とセットにすると180万円になるという提案を受けたことがありました。金額の大きさに驚いて、いったん検討させてほしいと伝えたそうです。後日、別の業者に耐震診断だけを依頼したところ、「補強が必要なレベルではない」という診断結果が出たとのことでした。
結果として外壁塗装だけを別の業者に依頼し直すことになり、時間も気持ちの負担も余分にかかってしまったお客様でした。診断結果より先に補強工事の金額が動いていたという点が、振り返ってみると引っかかるところだったと話しておられました。
私がお客様にお伝えしているのは、耐震の話が出たら、その場で契約を急がず、いったん外壁塗装の話と切り離して考えてほしいということです。多くの自治体では、耐震診断そのものを無料または低額で受けられる制度を用意しています。まずはそうした公的な窓口や、塗装業者とは別の建築士に診断だけを依頼し、必要性を客観的に確認してから、補強工事を誰に頼むかを改めて考えても遅くありません。
外壁塗装の点検と耐震の話が同じ日に同じ人から出てきたときほど、いったん一呼吸置いていただきたいと思っています。急いで決めなければならない話ではないはずです。