住宅の外壁塗装であれば、足場が組まれてシートで覆われても、暮らし自体はそのまま続けられます。ただ店舗や事務所となると話は別で、通りを歩くお客様の目に触れてはじめて成り立つ商売もあります。足場とシートで建物全体が覆われてしまうと、そこにお店があること自体が伝わらなくなってしまうんです。
前職で窓口の仕事をしていた頃、飲食店を経営されているお客様からご相談をいただいたことがあります。外壁がかなり傷んでいて工事自体は急いだ方がよい状態だったのですが、「工事中に常連さんに閉店したと思われたらどうしよう」と、とても不安そうにされていたのを覚えています。実際、シートで覆われている間に「あそこ、やめちゃったの?」と聞かれることは珍しくないという話も聞きました。看板が隠れてしまうだけで、そこまで印象が変わってしまうものかと、私自身も改めて考えさせられた出来事でした。
この時にお伝えしたのは、足場のシートに営業中である旨を大きく掲示できるかどうか、業者に確認してみてくださいということでした。無地の白いシートのままにするか、店名や「営業中です」の案内を印刷したシートにするかで、通行するお客様の受け取り方はずいぶん変わってきます。
すべての業者がこうした対応に慣れているわけではないので、事前に相談しておくことをおすすめしています。看板や入口の位置を業者と共有し、シートの重なりや足場の柱の位置を調整してもらえるかどうかも、契約前に確認しておきたいポイントだと思っています。ちょっとした一言を先に伝えておくだけで、工事中の見え方はずいぶん変わるものなんですよね。
店舗の外壁塗装では、お客様の出入り口だけでなく、仕入れの搬入経路も工事の影響を受けます。足場を組む位置によっては、普段使っているバックヤードの入口が塞がれてしまうこともあるんですよね。
先日も、美容室を営むお客様から「裏口に足場が組まれてしまい、シャンプー剤の配送業者が困っていた」というお話を伺いました。工事前の打ち合わせで、営業時間や搬入時間帯を業者に伝えておけば防げた場面だったと思います。小さなすれ違いですが、積み重なるとお客様や取引先との関係にも響いてくるものです。工事の見積もりの段階で、こうした裏側の動線まで質問してくる業者は、現場をよく分かっているという一つの目安になると思っています。
店舗経営者の方は日々の売上を考えるあまり、工期の短さだけで業者を選んでしまう傾向があるように感じています。ただ工期を詰め込みすぎると、その分職人さんの人数を増やして対応することになり、出入りの音や振動が増えて、営業中のお客様に落ち着かない思いをさせてしまうこともあります。
工期と営業への影響、そのバランスをどう取るかは、業種によっても事情が変わってくるはずです。業者に任せきりにせず、こちらの営業スタイルを伝えたうえで、一緒に工程を組み立ててもらう姿勢が大切なのだと思っています。カフェを営むお客様と相談した際は、定休日に合わせて音の出る作業を寄せてもらうよう調整したこともありました。
足場やシートの工夫だけでなく、工事の前に常連のお客様へひと声かけておくことも、実はとても効果があります。店頭の張り紙やSNSでの一言、あるいは会計の際に「来月から外壁を塗り替えるので、少しの間見た目が変わります」と伝えておくだけで、受け取られ方はまったく違ってくるんですよね。
業界に身を置いて長く経ちますが、工事そのものより、工事の「見え方」に対する不安を抱えているお客様の方が、実は多いのではないかと感じています。塗装業者を選ぶ際には、色や価格だけでなく、こうした営業への配慮まで一緒に相談できるかどうかも、判断材料に加えてみてほしいと思っています。