外壁塗装には、足場が欠かせません。2階や3階の高い部分まで塗り残しなく仕上げるためにも、職人さんが安定した状態で作業するためにも、なくてはならないものです。
ただ、その足場が家の外周をぐるりと囲む形で建つということは、普段は地上から届かなかった2階・3階の窓やベランダへのアクセスが、ぐっと容易になるということでもあります。梯子なしには上れなかった高さが、足場があるだけで誰でも上り下りできてしまう状態になる。そのことを、施主の立場ではなかなか意識しにくいんですよね。工事中は職人さんが出入りして現場が動いていますから、「誰かしら見ていてくれる」という感覚のほうが先に立って、かえって油断が生まれやすい時期でもあると、私は感じています。
前職時代のことです。担当したお客様の工事が無事に完了し、引き渡しも終わってほっとしていた頃に、そのお客様からお電話をいただきました。「工事中に2階の窓から侵入されて、貴重品がいくつかなくなってしまった」というお話でした。
お客様は工事の間、ほとんど1階で過ごしていたそうで、2階の窓の施錠が甘くなっていた日があったようです。足場があれば、外から2階の窓は目と鼻の先です。「そんなことになるとは思っていなかった」と、静かにおっしゃっていたお客様の声が、今でも頭の中に残っています。
その業者さんに悪意があったわけでは全くありませんでした。丁寧に施工してくださった方々でした。それでも、「外壁塗装を頼んだせいで足場が建ち、そのせいで被害に遭ってしまった」という経緯に、お客様がどれだけ複雑な思いを抱えておられたか。あのお電話の空気は、今でも忘れられないのです。工事期間中の防犯についてきちんとお伝えしなければ、と私が考えるようになったのは、あの頃からのことです。
では、どうすればいいのか。私がお客様によくお伝えしていることをお話しします。
まず、足場が建っている間は、2階以上の窓の施錠をいつも以上に意識していただくことです。日中でも、換気のために開けていた窓を閉め忘れる、ということは起きやすいです。「職人さんたちがいるから大丈夫」という気持ちが、かえって施錠の意識を薄れさせることがあります。職人さんが一時的に現場を離れる時間帯もあります。そうした時間こそ、意識して窓を確認していただきたいと思います。
センサーライトや防犯カメラを工事前に設置しておくことも、備えの一つになります。それから、近所へのご挨拶の際に「しばらく工事があります」と一言添えておくだけで、ご近所の方の目が自然と向くようになります。地域の目は、意外と大きな抑止力になるのです。貴重品を2階の目につく場所に置きっぱなしにしないことも、工事期間中だけでも意識していただければと思います。
こうした話をすると、「業者が信用できないということ?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そういうことではありません。
外壁塗装の工事では、元請けの業者さんが職人さんを手配する際、複数の方が現場に入ることがあります。その現場に入る人員の管理体制は、業者によって差があります。しっかりした業者さんであれば、誰がいつ現場に入るかを施主にきちんと伝え、関係者全員を把握しているものです。弊社がお客様にご紹介する業者さんには、こうした現場管理の体制についても確認するようにしています。
「信頼できる業者を選ぶこと」というのは、塗装の品質だけの話ではないと私は思っています。工事期間全体を通じて、施主が安心して過ごせるかどうかにも、業者の誠実さはにじみ出てきます。工事の質と、工事期間中の安心、その両方を一緒に考えていただければ、と思って私はお客様にお話しするようにしているんですよね。