外壁塗装の見積書を見ると、「足場工事」という項目が必ず入っています。この部分、実は塗装会社が自社で組むのではなく、足場を専門にする別の会社に外注していることが多いんですよね。塗装会社からすれば、足場は本業ではないので、専門の業者に任せた方が安全だし早いという判断なんだと思います。
お客様にとっては「頼んだ外壁塗装」の一部として、足場も含めて一つの工事という感覚だと思います。ですが実際の現場では、足場屋さんと塗装会社の職人さんが、顔を合わせることすらないまま工事が進むことも珍しくありません。契約書の上では一枚でも、現場では二つの会社が別々に動いているんです。
長野県にお住まいのお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。工事中、足場の一部が強風で揺れて、お隣のカーポートの屋根に小さな傷がついてしまったそうなんです。
お客様はすぐに塗装会社に連絡したのですが、「それは足場屋さんの管轄なので」と言われてしまい、足場屋さんに連絡すると「契約は塗装会社さんとですよね」と、お互いに責任を押し付け合うような状況になってしまったと、困り果てた様子で話してくださいました。幸い、最終的には塗装会社が窓口となって対応してくれたのですが、お客様は「結局、誰が責任を持ってくれるのか分からなくて、何日も不安な気持ちで過ごしました」とおっしゃっていました。
前職で現場のトラブル対応をしていた頃から、こういったお話は何度か耳にしてきました。工事そのものの技術的な問題ではなく、「窓口が誰なのか」が曖昧なことで、お客様の不安が長引いてしまう。これは今も変わらない業界の課題なんだと感じています。
こうしたすれ違いを防ぐために、契約前に確認しておいてほしいことがあります。それは、足場を含めて工事全体の責任窓口がどこになるのか、ということです。
多くの場合、元請けである塗装会社が全体の責任を持つ形になっているはずなんですよね。ただ、それが契約書や見積書にきちんと明記されているかというと、そうでないケースも見かけます。口頭で「大丈夫ですよ」と言われるだけで、話が終わってしまうことも少なくありません。
見積書や契約書に、「足場工事を含む工事全体の責任は弊社が負います」といった一文があるかどうか。これだけで、万が一のときの安心感がずいぶん違ってくると思います。聞きにくいと感じるかもしれませんが、工事が始まる前に聞いておく価値のある質問だと思います。
弊社では、加盟している業者さんに、足場を含めた工事全体の責任窓口を明確にしてもらうようお願いしています。小さなことかもしれませんが、こういった積み重ねが、お客様の安心につながると思うんですよね。
13,000件以上の現場に関わってきた中で、トラブルの多くは「誰も嘘をついていないのに、認識がずれていた」ことから生まれていました。そう思うと、確認すべきことを一つひとつ丁寧に伝えていくことが、私たちの仕事なんだと感じています。