前職で施主様からのご相談を受けていた頃、忘れられないお電話があるんです。
関東にお住まいの、ご主人を亡くされて一人暮らしをされている女性の方でした。外壁の見積もりに来た業者さんに「屋根も見ておきますね」と言われ、はしごを掛けられた。お茶を出して待っていたら、降りてきた担当者が瓦の割れた写真を見せて「このままだと雨漏りします、今日中に決めてもらえれば」と。結局その場で屋根の工事まで契約されて、あとから不安になって私どもにお電話をくださったんですよね。
その写真が本当にご自宅の屋根だったのか。上がる前から割れていたのか。今となっては確かめようがありません。お電話口で「私が上がっていいって言ったから…」と何度もおっしゃっていたのが、今も耳に残っています。
誤解してほしくないのですが、屋根に上がって点検する業者さんが怪しい、という話ではないんです。
屋根は下からでは見えない部分がほとんどです。棟の板金が浮いていないか、塗膜がどこまで傷んでいるか。真面目な業者さんほど、きちんと自分の目で確かめてから見積もりを出したいと考えます。外壁塗装と屋根を同時に塗るかどうかを判断するためにも、実際に見てもらう意味は大きいと思っています。
問題は「上がること」ではなく、上がったあとに何が起きるか、なんですよね。
お伝えしているのは、とてもシンプルなことです。
まず、上がる前に「撮った写真は全部見せてくださいね」と一言伝えておくこと。良い業者さんは、言われなくても家の全景から順番に撮って、どこの写真なのか分かるように見せてくれます。傷んでいる箇所だけを切り取ったアップの写真ばかり、というのは少し気をつけてほしいところです。
それから、可能であれば点検の様子を下から見ていてほしいんです。ずっと見張る必要はありません(お茶の準備もありますしね)。ただ、お客様が外にいてくれるだけで、業者さん側の緊張感はまるで違います。
そして、どんなに不具合を指摘されても、その日のうちには決めないこと。本当に急ぐべき傷みなら、業者さんは応急処置の方法も一緒に教えてくれるはずです。
逆のケースもあります。
以前、屋根を一度も見ずに「屋根も塗りましょう」と見積もりに載せていた業者さんがいました。お客様は塗装の必要がない屋根材だったにもかかわらず、です。後から別の業者さんが上がって確認して、ようやく分かったという話でした。
上がって見てくれる業者さんが安心で、上がらない業者さんが不安、という単純な話でもないんです。大切なのは、見た上で何を説明してくれるか。その説明がお客様にとって分かりやすいかどうか。ここに業者さんの姿勢が一番よく表れると、私は感じています。