外壁塗装の見積書を初めてご覧になったお客様から、「足場代ってこんなに高いんですか」という声をよくいただきます。建物の規模にもよりますが、30坪前後の住宅では15〜20万円ほどになることも珍しくありません。
だから「外壁と屋根を別々にお願いしたい」と考えていたお客様が、見積書を見て「あ、それなら一緒にやったほうがいいかな」と気づかれることは多いんですよね。この判断は、費用の面だけで言えばかなり合理的です。
先日もこういうご相談がありました。「4年前に外壁だけ塗ってもらいました。今度は屋根だけお願いしたいのですが」——見積もりを確認すると、屋根の施工費よりも足場代のほうが高い、という状況になっていました。あのとき一緒にやっておければ、という気持ちが、ふと頭をよぎりました。
ここで少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
屋根の状態が、外壁と比べてまだ十分に良いケースというのは意外と多くあります。あと8〜10年は持ちそうだ、という屋根をわざわざ今塗り替えるのは、かえって無駄になることもある。塗料には耐用年数というものがあって、早く塗り直せばその分長持ちするというわけでもなく、タイミングを早めすぎると「もう一度塗る」サイクルが前倒しになってしまいます。
「足場代がもったいないから」という動機だけで決めてしまうと、本来は必要のない工事にお金を使うことになりかねない。だからこそ、屋根の現状をきちんと診てもらってから判断するのが大切だと思っています。
前職でたくさんのお客様の工事をお手伝いしてきた中で、今でも心に残っているケースがあります。
埼玉県にお住まいのご夫婦から、「外壁のチョーキングが気になる」とご連絡をいただきました。屋根については「見た目は問題なさそうだし、今回はいいかな」とのことで、外壁のみ工事を進めました。担当の業者さんも「屋根はしばらく大丈夫そうですね」とおっしゃっていたとのことで。
ところが翌年、天井の一部にシミが出始めたと再びご連絡をいただいたんです。調べてみると、屋根のひび割れから雨水が少しずつ浸入していたことが分かりました。「問題なさそう」というのは、あくまで見た目の話だったわけです。
あのとき、誰かが「屋根の状態を写真付きでちゃんと確認しましょう」と一言言えていたら——と思うと、今でも悔しい気持ちになります。施主の方に「大丈夫ですよ」と伝えることの責任の重さを、改めて感じた出来事でした。
見積もりの際に「屋根も一緒にやりませんか」という提案を受けることは、よくあることです。
この提案が施主のためを思ってのものか、そうでないかは、説明の中身を見ると分かることが多い。「屋根がこういう状態なので、今回一緒にやっておくと長持ちしますよ」と、写真や診断結果とセットで話してくれる業者は、信頼に値する可能性が高いと私は感じています。
一方で「足場も建てるんだし、せっかくだから」という言葉だけで背中を押してくるような場合は、少し立ち止まって「では今の屋根の状態はどうなんでしょうか」と聞いてみてほしいんですよね。その質問にきちんと答えてくれる業者かどうか、そこでも見えてくるものがあります。
屋根と外壁を同時に工事するかどうかの答えは、「屋根が今どういう状態にあるか」によって変わります。
足場代の節約を軸に考えるのではなく、まず屋根を診てもらって、その状態を説明してもらう。それが出発点です。劣化が進んでいるなら同時工事は大きなメリットがある。状態が良ければ、今回は外壁だけで問題ない。この順番を踏むだけで、判断の確度がずいぶん変わると思っています。
弊社では、こうした判断をひとりで抱えなくて済むよう、複数の業者から診断・見積もりを取って比べていただける仕組みを作っています。「一社に言われたから」ではなく、複数の目線を経て決める——そのお手伝いができればと思っています。