前職で中古住宅の相談を受けていた頃、内覧の際に「外壁がとてもきれいですね」と喜んでいらっしゃるお客様を何人も見てきました。もちろん、本当に丁寧な塗装がされている家もあります。ただ中には、売却が決まった直後に、最低限の下地処理だけで一気に塗り上げてしまうような工事も実際にあるのです。
見た目の色ムラがなければ、素人目にはまず分かりません。塗膜の厚みや下塗りの有無は、剥がれてこない限り表には出てこないものなんですよね。
長野県のあるお客様から、入居して二度目の冬を迎えたころ、南面の外壁だけ塗料が浮いて剥がれてきたというご相談をいただいたことがあります。前の持ち主が売却の一年ほど前に外壁塗装をしていたと聞き、保証書も一応残っていたそうなのですが、施工店に問い合わせると「その保証は前所有者名義のもので、名義変更の手続きがされていない」と言われてしまったそうです。
剥がれた部分を見せていただくと、下塗り(シーラー)がほとんど乗っていない様子で、上塗りだけを重ねたような仕上がりに見えました。断定はできませんが、短い工期で仕上げることを優先した工事だったのではないかと、私は感じています。
このお話を伺ってから、私は中古住宅を検討されているお客様には、外壁塗装の履歴を必ず確認するようお伝えするようにしています。いつ、どの業者が、どんな仕様で塗ったのか。保証書や工事写真、使用した塗料名が分かる書類が残っているかどうかで、その後の安心感はまったく違ってきます。
書類が残っていない場合でも、外壁の表面を近くで見せてもらう、可能であれば触らせてもらうといったことで、気づけることもあります。艶の残り方や、コーキングの状態は、塗装の時期や丁寧さを推し量る手がかりになるからです。
私自身、こうした話を聞くたびに、外壁塗装は「見た目を整える工事」ではなく「その家に住む人の暮らしを守る工事」なのだと、あらためて思わされます。売却を控えた方が外壁塗装を検討される場合も、購入する側が困らないよう、施工内容や保証の引き継ぎについて業者としっかり話し合っていただきたいのです。
中古住宅の外壁は、家の履歴そのものだと思っています。