賃貸経営をされているオーナー様からの外壁塗装のご相談は、この一年ほどで目に見えて増えてきたように感じています。理由をお聞きすると、金融機関から修繕計画の提出を求められたとか、入居者募集のために外観を整えたいとか、事情は様々です。中には、相続で急に物件を引き継いだばかりで、何から手をつければいいのか分からないというオーナー様もいらっしゃいます。
ただ、持ち家の外壁塗装と大きく違う点があります。それは、工事の間もそこに人が住み続けているということです。オーナー様ご自身は現場に立ち会わないことも多く、実際に足場を組んで塗料の臭いの中で過ごすのは入居者さんなんですよね。この当たり前のようなことが、意外と見落とされがちだと感じています。
長野県のあるオーナー様からいただいたお電話が、今でも忘れられません。所有されている二階建てのアパートで外壁塗装をすることになり、業者との打ち合わせも順調に進んでいたそうです。ところが、いざ足場を組む段階になって、入居者さんへの説明がほとんどされていなかったことが分かりました。
洗濯物が干せない、窓を開けられない、日中は業者の出入りがある。そうした生活への影響を、工事の数日前になって初めて知らされた入居者さんもいたそうです。結果として、契約更新のタイミングで退去を決めた方がいらっしゃったと伺いました。塗装そのものに問題はなかったのに、です。
業界に身を置いて20年になりますが、こうしたすれ違いは工事の質とは別のところで起きるんですよね。入居者さんにとって、外壁塗装は「知らないうちに始まる工事」になりがちで、そこに不信感が生まれてしまう。オーナー様が悪いわけでも、業者が手を抜いたわけでもないのに、双方にとって後味の悪い結果になってしまうことがあります。掲示板に貼り紙をひとつ出すだけでも、印象はまったく違ったはずなんです。
工期と空室のバランスに悩まれるオーナー様も多いです。塗装工事は天候に左右されますし、乾燥期間も必要なので、当初の予定より延びることも珍しくありません。その間、家賃収入は変わらず発生している一方で、入居者さんからのクレーム対応や、次の入居者募集のタイミングも気にしなければならない。
このあたりの調整を、業者側がどこまで一緒に考えてくれるかで、オーナー様の負担はずいぶん変わってきます。工程表を渡して終わり、という業者もいれば、掲示物の文面作成から手伝ってくれる業者もいる。同じ工事内容でも、そこに差が出るところだと感じています。退去が決まっている部屋があるなら、そこから工事を始めるといった順番の工夫も、相談すれば見えてくることがあります。
収益物件の外壁塗装を検討される際は、塗料や金額の話だけでなく、入居者対応まで含めて相談できる業者かどうかを見ていただきたいと思っています。掲示文のひな形を持っているか、洗濯物やベランダの使用について具体的な代替案を提示できるか、クレームがあったときの窓口をどう分けているか。こうした質問への答え方で、その業者が賃貸物件の工事に慣れているかどうかが見えてくるように思います。
弊社にご相談いただく際も、まずは入居者さんの人数や生活スタイルをお聞きするようにしています。空室が多い時期を狙って提案することもありますし、繁忙期を避けて早めの着手をお勧めすることもあります。オーナー様の資産を守る工事だからこそ、そこに住む方々の暮らしも一緒に考えたいという気持ちで向き合っています。管理会社さんとの連携がうまくいくかどうかも、実は工事全体の印象を左右する大事なポイントだと思っています。