外壁塗装の金額って、「壁の面積×単価」でスパッと決まると思われがちなんですよね。もちろんそれが基本ではあります。ただ、現場をたくさん見てきて思うのは、同じくらいの大きさのお宅でも、地域が変わると見積もりの数字がけっこう動くということなんです。
一番大きいのは、職人さんの人件費です。都市部は人を確保するだけでもコストがかかります。逆に地方では足場の運搬や、業者が現場まで通う距離が金額に乗ってくることもある。雪の多い地域では、そもそも工事ができる時期が限られていて、その分だけ繁忙期に予約が集中しやすい、なんていう事情もあったりします。土地ごとの暮らしが、そのまま塗装の値段に表れているんですよね。
だから「相場はだいたい○○万円」という一つの数字だけを握りしめて、それより高い・安いと判断してしまうのは、私としては少し心配なんです。
前職で、長野県のあるお客様から「都内の友人が払った金額と比べて、うちは高すぎる気がする」とお電話をいただいたことがありました。お話を伺っていくと、お友達のお宅はそもそも建物の形がシンプルで、そのお客様のお宅は凹凸が多く、塗る手間も足場の組み方もまったく違う。さらに住んでいる環境も違えば、同じ土俵で比べること自体が、なかなか難しかったんです。
そのお客様は最終的にご納得されて工事に進まれたのですが、電話口で「比べる相手が違っていたんですね」とおっしゃった声を、今でも覚えています。私たちはつい、分かりやすい数字に飛びついてしまう。気持ちはすごく分かるんです。ただ、家というのは一軒ずつ違いますし、その家が立っている場所の事情も違う。相場はあくまで目安で、ものさしの一つなんですよね。
ネットの平均額は、出発点として知っておく価値は十分にあります。でも、それを唯一の正解にしてしまうと、かえって判断を誤ることがある、と感じています。
地域差の話をすると、ときどき「では金額の安い地域の業者に頼めば得なのでは」と聞かれます。お気持ちは分かります。ただ、ここには落とし穴があるんです。
遠方の業者を呼べば、移動や宿泊の費用がどこかに乗ってきますし、何より工事が終わったあとが心配です。数年後に塗膜のことで気になる点が出てきたとき、すぐに駆けつけてもらえる距離にいるかどうか。これは金額には表れにくいけれど、長い目で見るととても大事なところなんですよね。安さだけで遠くから呼んで、いざという時に連絡が取りづらくなった、というお話も耳にしてきました。
地元で長く商売をしている業者さんは、その土地の気候も、近所付き合いの空気も分かっています。多少の金額の違い以上に、そういう「近さ」が安心につながる場面は少なくないと思っています。
では、地域差があると分かったうえで、どう向き合えばいいのか。私がお伝えしているのは、まず自分の住む地域の相場を知ること、そのうえで複数の地元業者から見積もりを取って、その地域の中で比べてみる、ということです。
他県の数字と比べて一喜一憂するのではなく、同じ条件・同じエリアの中で並べてみる。すると、その金額が妥当なのかどうかが、ぐっと見えやすくなります。極端に安い見積もりがあれば、何かを省いている可能性に気づけますし、高い場合もその理由を尋ねることができる。比較の土俵を揃えるだけで、判断の精度はずいぶん変わってくるんです。
業界に身を置いて二十年、数字の裏には必ず理由がある、というのが私の実感です。その理由を一緒に読み解いていくことが、後悔のない一回にするための近道なのだと思っています。