前職で担当した案件の中に、今でも忘れられないやり取りがあります。
埼玉にお住まいのあるお客様が、工事の数ヶ月後にご連絡をくださいました。「知り合いから紹介してもらった業者に頼んだんですが、もう塗膜が浮いてきていて…」と、声のトーンがとても沈んでいたんですよね。詳しく伺っていくと、見積もりは「顔見知りだから」と金額だけ確認して明細は見なかった、使用塗料のことも把握していなかった、工事中は任せっきりで、完工の立ち合いも省いてしまった、ということでした。
紹介してくださった工務店の方に悪意があったとは思いません。ただ、外壁塗装の仕上がりを判断する知識が、紹介者の方にも十分ではなかったというのは、こうしたケースではよくあることです。「あの人が紹介したなら安心」という気持ちは、残念ながら技術的な保証とは全く別の話で。そこを混同してしまうと、後悔につながりやすいと感じています。
紹介業者によるトラブルには、もうひとつ厄介な面があります。
群馬にお住まいのあるお客様が、工事完了後に気になる箇所があったにもかかわらず、「親戚の知り合いに頼んだ手前、クレームを入れたら迷惑をかけてしまう」と、半年近くご連絡を躊躇されていたことがありました。ようやくお電話いただいたときには、補修対応が難しい段階に差し掛かっていて、私も胸が締め付けられる思いでした。
外壁塗装は、完工後に不具合が見つかったときほど、早めの連絡が大切です。放置すれば補修の難易度が上がり、費用がかさんでいくこともあります。紹介業者であっても、気になることがあれば早めに、率直に伝えてほしい。そういう言葉を交わせる関係性を、最初から作っておくことが、本当に大切なんだと思います。
誤解していただきたくないのですが、私は「知人の紹介を使うな」と言いたいわけではありません。
縁をたどって業者と出会うのは、決して悪いことではないんです。問題は、そこで「確認をやめてしまうこと」だと思っています。見積もりは書面でもらうこと、使用する塗料のメーカーやグレードを確認すること、できれば別の業者にも見積もりを出してもらって相場感をつかむこと。こうした手順は、紹介業者であっても省いてはいけないものだと、長く業界に身を置いてきた私は感じています。
前職のころ、お客様によくお伝えしていたのは「紹介はとても良い入口です。でも最終的には、お客様ご自身で確認した上で決めてください」ということでした。紹介してくださった方も、あなたに後悔してほしいとは思っていないはずですから、「念のため確認させてください」と一言添えることで、関係性を壊すことはまずないと思います。
「確認したら、紹介してくれた人への失礼にならないか」というご不安を、よく耳にします。
私はこれを、杞憂だと思っています。信頼のおける業者であれば、施主がきちんと確認してくださることを、むしろ歓迎します。工程や使用材料への質問に丁寧に答えてくれる業者ほど、工事後のやり取りも誠実なことが多い——というのが、20年の肌感覚です。
逆に、質問することを嫌がったり、曖昧な答えしか返ってこなかったりする場合は、紹介であっても一度立ち止まって考えてほしいと思います。紹介はあくまで縁であって、業者の技術力や誠実さは、やはりご自身の目で確かめていただくことが大切なんですよね。弊社がお役に立てるとすれば、まさにそういった「確認のお手伝い」の部分だと思っています。