ご相談の多くは、こんな形で始まります。お子さんが独立したら二世帯にする、老朽化が進んだら建て替えて駐車場付きの平屋にする。そんな将来の計画を持ちながら、今の家をどこまで手入れするべきか迷っていらっしゃるんですよね。
塗装は決して安い買い物ではありません。数年後には壊すかもしれない家に、まとまった金額をかける。その違和感は、当然のものだと思います。ただ実際にお話を伺っていくと、「建て替えの時期」自体がまだ確定していないケースが、思っていたよりずっと多いんです。
ある地方都市にお住まいのお客様のお話です。ご主人が「あと5年もしたら建て替える」とおっしゃっていて、外壁のひび割れに気づきながらも塗装を見送っていらっしゃいました。ところが、お子さんの独立が延びたり、ご両親の介護が始まったりと、事情が重なって建て替えの計画は先送りになっていったそうです。
気づけば当初の予定から7年が経ち、ひび割れから雨水が入り込んで下地が傷んでいました。ご相談をいただいたときには、塗装だけでは済まず、下地の補修から必要な状態になっていたんです。「あのとき小さな補修だけでもしておけばよかった」と、お客様がぽつりとおっしゃっていたのを今でも覚えています。建て替えの計画自体が悪いわけではなく、計画が変わる可能性まで含めて考えていなかったことが、後悔につながってしまったのだと思います。
私がお客様にお伝えしているのは、「いつ壊すか」よりも「今、どれくらい傷んでいるか」を先に確認してほしいということです。ひび割れや雨漏りにつながる劣化がある場合、それを放置すると建て替えの時期に関係なく、住まいそのものの寿命や快適さに影響してきます。
一方で、外壁の状態が比較的良好で、あと数年で建て替えが確定しているのであれば、全面塗装ではなく別の選択肢もあります。建て替え時期がまだ流動的なご家庭ほど、この見極めを丁寧にされたほうがいいと感じています。
実は、外壁のお悩み全てに全面塗装が必要なわけではありません。ひび割れ部分だけのコーキング補修、雨水の侵入を防ぐための部分的な防水処理など、建て替えまでの期間をしのぐための手当てだけで済むケースもあります。
大切なのは、業者に相談した際に「全面塗装が必要です」の一言だけで終わらせず、建て替えの計画を正直にお伝えして、それを踏まえた提案をもらうことだと思います。将来の計画を隠したまま見積もりを取ると、必要以上の工事を勧められてしまうこともありますし、逆に本当に必要な補修が見落とされてしまうこともあるんです。