住宅の売買を仲介する不動産会社が、リフォームや外壁塗装の業者を紹介するケースは業界内では珍しいことではありません。不動産会社にとっては顧客サービスの一環である一方、紹介先の業者から手数料を受け取る関係が存在する場合があります。これは業界の商慣習として広く知られていることであり、それ自体が悪いことだとは思っていません。ただ、その手数料が工事費用に上乗せされている可能性がある、ということまで意識しているお客様は少ないように感じます。
埼玉県のあるお客様から伺ったお話が今でも記憶に残っています。中古住宅を購入した際、担当してくれた不動産会社から「提携している塗装店があるので、外壁の状態を一度見てもらってはどうですか」と勧められたそうです。担当者への信頼もあり、そのまま契約を進めたのですが、後になって知人から相場を聞いたところ、金額にかなりの開きがあったといいます。「紹介してもらったから、てっきり良心的な金額だと思っていたんです」と、少し困った様子で話してくださったのを覚えています。
紹介という言葉には、不思議と人を安心させる力があります。知人からの紹介であれ、専門家からの紹介であれ、「わざわざ悪い業者を紹介するはずがない」という気持ちが働くのは自然なことだと思います。ただ、不動産会社と塗装業者の関係は、あくまでビジネス上の提携であって、担当者の個人的な人間関係とは性質が異なります。担当者自身も、紹介先の施工内容や見積もりの妥当性まで細かく把握しているとは限らないのです。
前職で相談を受けていた頃、住宅購入直後で慌ただしい時期に紹介された業者とそのまま契約し、他と比べる余裕がなかったというお話を何度か伺いました。住み替えの手続きで気持ちに余裕がないタイミングだからこそ、紹介された安心感に頼ってしまうのだと思います。
紹介そのものを否定するつもりはありません。信頼できる担当者からの紹介がきっかけで、良い出会いにつながることも実際にあります。大切なのは、紹介された業者であっても、見積もりの内訳や工事内容を一度立ち止まって確認する姿勢だと思っています。可能であれば、もう一社ほど見積もりを取り、金額や提案内容を比べてみることをお勧めしています。
建設業許可の有無や、これまでの施工実績を尋ねてみるのも良い方法です。紹介元との関係を気にして遠慮してしまう方もいらっしゃいますが、ご自身の住まいにかかる費用ですから、確認すること自体は何も失礼にはあたらないと私は考えています。
業界歴20年、13,000件以上のマッチングに携わってきた中で、紹介という仕組みそのものにはさまざまな形があることを見てきました。悪意のない紹介がほとんどだと思う一方で、紹介という安心感の陰で、お客様が比較検討の機会を持てないまま契約に至ってしまう場面を見るたびに、もう少し情報が届いていればと感じてきました。
弊社を立ち上げたのも、そうした情報の非対称性を少しでも埋めたいという思いからです。誰から紹介された業者であっても、ご自身で確かめる材料を持っていただきたい。それが、同じ思いをするお客様を一人でも減らすことにつながると信じています。