前職でマッチングを担当していた頃のことを、今でも思い出すことがあります。神奈川県のあるお客様から最初にご相談をいただいたのは、築後13年ほどのタイミングでした。いくつかの業者をご紹介してお見積もりを取っていただいたのですが、「もう少し考えさせてください」とおっしゃって、そのまま2年ほどが経過してしまいました。
再びご連絡をいただいたとき、状況はすでに変わっていました。外壁のひびが深くなり、雨水が染み込んだ痕跡が複数箇所に広がっていたのです。塗装だけで済んでいたはずの工事が、下地補修を含む規模に変わっていました。「もっと早く決断していれば……」とおっしゃっていたお客様のお声が、今も心に残っています。
一件だけではありません。前職時代を含めると、同じような経緯をたどったお客様のご相談を、私は何度も受けてきました。
外壁の傷みは、表面に変化が出る前から始まっています。塗膜の防水性能は、年月とともに少しずつ落ちていきます。表面のチョーキング(触ると白い粉がつく現象)や細かいひびが目に見えてきたとき、実はすでに雨水が塗膜の下に入り込みやすい状態になっていることが多いんですよね。
外壁の傷みが表面だけであれば、塗装工事として完結します。ところが下地の木材や金属部分まで湿気が及んでしまうと、そこから先は塗装以外の補修が必要になります。部分的な張り替えが生じることもありますし、それが複数箇所に及ぶと、費用の規模がまったく変わってきます。表から見ているだけでは気づきにくい、というのが厄介なところなのです。
先延ばしにする理由として、やはり一番多いのは費用の問題だと思います。「今は余裕がないから、もう少し後で」。その判断自体は、まったく不自然なことではありません。
先日も、埼玉県のお客様から「3年前に迷って見送ったことをいま後悔している」というお話をいただきました。外壁内部に湿気が入り込んでいて、塗装だけでなく外壁の一部をやり直す工事が必要になったとのことでした。費用の節約を考えていたはずが、結果的に大きな出費になってしまった——そういうケースが、残念ながら少なくないのです。塗装費用を後回しにしていた間も、傷みは着実に進んでいるわけですから。
業界に身を置いて20年近くになりますが、「もっと早く相談すれば良かった」という言葉は、今も変わらずよく聞く言葉のひとつです。
では、いつ決断すればいいのか。難しい問いだとは思います。
私がお客様によくお伝えするのは、まず「今の外壁がどういう状態なのかを知ること」です。白い粉が指につく、細かいひびが入り始めている、色あせや汚れが気になりだした——こういった変化が出てきたら、一度点検を受けてみることを考えてほしいのです。点検を受けたからといって、すぐに工事が決まるわけではありません。状態を把握したうえで「来年に向けて計画を立てる」という判断も、十分にできます。
弊社がご相談をお受けするとき、工事を急かすことは意識してしていません。ただ、「知らないまま先延ばしにする」と「状態を把握したうえで時期を選ぶ」は、まったく別の話だと思っています。前者は傷みが進んだあとで初めて気づくことになり、後者は自分のペースで判断できます。どちらが後悔しにくいか、きっとお客様自身が一番よくご存知なのではないかと思うんです。