大手の塗料メーカーには、自社の塗料を使う工事現場に技術担当の方が訪問し、下地の状態や塗布量、乾燥時間の取り方などを確認する制度があります。名前や運用の仕方はメーカーによって様々なのですが、業界では「パトロール」と呼ばれることが多いです。
これを聞くと、塗料メーカーは塗料を売っているだけの会社で、自分の家の工事には関係ないと思われる方がほとんどです。ですが実際には、メーカー保証を受けるための条件として、規定の工法で塗られているかを確認する仕組みが用意されている場合があるんですよね。契約した業者だけでなく、塗料を作った側もその家の仕上がりに関わっているというのは、あまり知られていない話だと思います。
前職で窓口の仕事をしていた頃、同じ町内で時期の近い外壁塗装が二件重なったことがありました。片方のお客様は、業者から「メーカーの人が一度見に来ます」と説明を受けており、実際に工程の途中で確認が入っていました。もう片方のお客様には、そうした話は一切なかったそうです。
数年後、パトロールのなかった方のお宅で、塗膜の一部が早めに浮いてくるという相談をいただきました。原因の断定はできませんでしたが、お客様が「あのとき誰かに見てもらっていたら」とぽつりとおっしゃっていたのを、今でも覚えています。パトロールがあれば必ず防げたとは言い切れません。それでも、第三者の目が入るという安心感は、工事が終わったあとの気持ちの持ちようにも影響するのだと感じた出来事でした。
理由はいくつかあると思っています。ひとつは、パトロールを呼ぶこと自体が業者にとって手間になるということ。日程調整が増えますし、施工の粗さが見つかれば指摘を受けることにもなります。もうひとつは、塗料の仕入れルートによっては、メーカーと直接やり取りできる立場にない業者もあるということです。
こうした事情から、パトロールを積極的に案内しない業者がいるのも事実です。悪気があるというより、そもそも制度を使う発想がない、という場合も多いように思います。一方で、しっかりした業者ほど「うちはパトロールを入れています」と自分から説明してくれる傾向があるとも感じています。
もし今、外壁塗装を検討されているなら、見積もりの段階で「使用する塗料はメーカーの保証登録やパトロールの対象になりますか」と聞いてみてほしいです。この一言で、業者がその塗料の扱いにどれだけ慣れているかが見えてくることがあります。
パトロールがあること自体を工事の絶対条件にする必要はありません。ただ、そういう仕組みが世の中にあると知っているだけで、見積書や保証書を見る目が少し変わってくるはずです。私自身、この話をお客様にすると「そんな仕組みがあったんですね」と驚かれることが多く、まだまだ知られていない情報なのだと感じています。