業界に身を置いて20年になりますが、「弊社オリジナル塗料」「特注配合」という言葉を掲げる業者に、これまで数えきれないほど出会ってきました。中身を辿っていくと、大手メーカーの既製品に独自の商品名をつけているだけ、というケースが少なくありませんでした。悪いことだと決めつけるつもりはありません。ただ、その塗料がどのメーカーの何をベースにしているのか、施主に説明されないまま契約が進んでしまうことに、私はずっと引っかかりを覚えていました。
前職で「外壁塗装の窓口」に勤めていた頃、こうした相談を受けるたびに、まず塗料の正体を一緒に調べるところから始めていました。カタログも成分表も出てこない塗料は、他社の見積もりと並べて比べることすらできません。価格が高いのか安いのか、耐用年数が妥当なのかも、施主自身では判断のしようがないんですよね。
忘れられないお話があるんです。長野県にお住まいのお客様から、契約後にこんなご相談をいただいたことがあります。「特別なグレードの塗料だと説明されて契約したのに、いざ調べてみたら、どのメーカーの製品かも教えてもらえなかった」と。工事自体は無事終わったそうですが、その塗料が本当に説明通りの性能を持っていたのか、確かめる手段がなかったとおっしゃっていました。
話を伺いながら、窓口にいた頃の記憶がよみがえりました。同じような不安を口にされる方に、何度も向き合ってきたからです。塗料の名前を業者独自のものに変えられてしまうと、施主にとっては「信じるしかない」状態になってしまう。この状態こそが、一番危ういと私は感じています。
相見積もりを取ったとしても、それぞれの業者が違う名前の塗料を提示してくると、単純な価格比較が成立しません。同じ大手塗料メーカーの製品であっても、呼び方を変えられてしまえば、施主の側では中身が同じかどうか見分けがつかなくなってしまいます。
中には、実際にはグレードの低い塗料を使いながら、名称だけを高級そうに見せているケースも見聞きしてきました。こうした業者ばかりではありませんが、少なくとも「比較できない状態」を意図的に作り出している業者が一部にいることは、知っておいていただきたいと思っています。
もし「オリジナル塗料」「特別配合」という言葉が出てきたら、まずメーカー名と製品名を尋ねてみてください。カタログや技術資料の提示を求めるのも良い方法だと思います。まっとうな業者であれば、こうした質問に嫌な顔をせず答えてくれるはずです。
逆に、名前を濁されたり、資料を見せてもらえなかったりする場合は、一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。塗料の正体が分からないまま契約を進めることは、工事後の保証やメンテナンス計画にも関わってくるからです。