外壁の塗り替えというと、色を選んだり、耐用年数の長い塗料を選んだりすることに関心が向きがちですが、実は今の外壁に塗られている塗膜と、新しく塗る塗料の相性という視点が抜け落ちてしまうことがあります。ウレタン系の上にシリコン系を重ねる場合、フッ素系の上に安価なアクリル系を重ねる場合など、組み合わせによっては密着不良を起こし、数年で浮きや剥がれにつながることがあるんですよね。
前職で相談を受けていた頃、「なぜ剥がれたのか分からない」というお問い合わせは決して珍しいものではありませんでした。施主様からすれば、新しい塗料を選んで、きちんとお金を払って塗ってもらったのに、という気持ちが強く、業者との間で言った言わないのトラブルに発展することも多かったです。
新潟県にお住まいのお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。塗り替えてから2年ほどで、外壁の一部がぽつぽつと浮き始めた、というご相談でした。現地を確認させてもらうと、前回の塗装で使われていた塗料の種類を確認しないまま、密着性を高めるための下塗り(プライマー)を省略して、仕上げの塗料だけを重ねていたことが原因だったようです。
このお客様は「見積もりの時に、下塗りは何を使うんですか、と聞けばよかったんですかね」とおっしゃっていました。この質問を自分から思いつく施主様は、実はそれほど多くありません。だからこそ、業者の側がきちんと確認し、必要な工程を省かずに提案する責任があるはずなんです。私は今でもこのお話を思い出すと、胸が痛くなります。
既存塗膜の種類を調べるには、現地調査の際に塗膜を少し採取して溶剤で溶かしてみたり、過去の工事履歴を確認したりする手間がかかります。工期を急ぎたい業者や、見積もりの数をこなしたい業者にとっては、この工程が省略されがちな部分でもあるんです。
一部の業者では、どんな外壁にも同じ商品を勧める、という営業スタイルを取っているところもあるようです。もちろん相性を問題にせず塗れるケースも多いのですが、可能性がある以上、確認しないまま進めてしまうのはお客様にとってリスクになりますよね。
もし今、塗り替えを検討されているなら、見積もりの際に「今の外壁に塗られている塗料の種類は分かりますか」「下塗り材は何を使う予定ですか」と一言聞いてみてほしいんです。答えに詰まったり、はぐらかされたりするようであれば、少し立ち止まって考える材料になると思います。
逆に、既存塗膜の状態をきちんと調べた上で、それに合わせた下塗り材を提案してくれる業者であれば、その一点だけでも信頼できる材料になるはずです。塗装は仕上がりの色や艶だけでなく、見えない部分の相性まで含めて初めて長持ちするものだと、業界に身を置いて20年、実感しています。