最近は、スマートフォンで撮った写真や短いビデオ通話だけで見積もりが出て、そのまま契約まで進められるサービスが増えてきました。忙しい方にとっては、業者を家に上げる手間も、日程調整の煩わしさもなく、画面の中だけで話が進んでいくので、気持ちは分かるんですよね。
ただ、外壁というのは、近くで触ってみないと分からないことが本当に多いんです。ひび割れの深さ、コーキングの弾力、チョーキング(手で触ると白い粉がつく現象)の進み具合。これらは写真の解像度がどれだけ良くても、画面越しでは判断がつきにくいものだと感じています。
前職で外壁塗装の窓口をしていた頃、遠方に住むご家族が、実家の外壁塗装を代理で手配したいというご相談をいただいたことがあります。ご本人は現地に来られないため、業者とのやり取りはすべて写真とメールで進んでいました。
契約後、いざ足場を組んで近くで見てみると、写真では分からなかった下地の傷みが見つかり、追加の下地補修が必要になったんです。金額も工期も当初の想定から変わってしまい、遠方のご家族は「聞いていた話と違う」と戸惑っておられました。業者に悪意があったわけではないと思います。ただ、現地を見ないまま出した見積もりには、どうしても限界があったのだと思います。
この話を聞いてから、私は「現地を見ずに出す金額は、あくまで仮の数字だ」という前提を、お客様にきちんと伝えることの大切さを改めて感じるようになりました。
誤解してほしくないのですが、オンラインでのやり取りや、初回のスクリーニングを画面越しに行うこと自体は、悪いことではないと思っています。むしろ、最初の相場感をつかんだり、業者を絞り込んだりする段階では、とても便利な仕組みだと感じます。
問題なのは、その手軽さのまま、現地調査を一度も挟まずに契約まで進んでしまう場合です。特に、契約前の最終見積もりだけは、実際に足場を組む前に、誰かの目で現地を確認しておいてほしいと思っています。
「この見積もりは、現地を見た上での金額ですか」。この一言を、契約前に業者へ聞いてみてほしいんです。もし現地調査がまだなら、いつ、誰が来るのかを確認する。それだけで、着工後の「言っていた金額と違う」というすれ違いは、かなり防げるように思います。
ご高齢のご両親の家を、離れて暮らすお子さんが手配するケースも増えています。忙しい中で手続きを進めたい気持ちはよく分かるのですが、現地調査のひと手間だけは、省略しないでいただきたいなと思っています。