二世帯住宅は、玄関やお風呂が分かれていても、外壁は一枚の壁としてつながっています。当たり前のことなんですが、いざ見積もりが出てくると「うちの世帯の面積はどこからどこまでなんだろう」という疑問が急に浮かんでくるんですよね。
親世帯が建てた家に子世帯が同居している場合、費用は親が持つものだという暗黙の前提があるご家庭もあれば、逆に「もう半分は自分たちの家でもあるから」と申し出る子世帯もいます。正解が決まっているわけではないので、余計に言い出しにくい空気が生まれてしまうのだと思います。
前職の頃、静岡県のあるお客様を担当したことがありました。一階に親世帯、二階に息子さんご夫婦が暮らす二世帯住宅で、外壁の傷みが目立ってきたので塗り替えを検討されていたんです。見積もり自体はスムーズに進んだのですが、いざ支払いの段になって、お母様が「私たちが全額出すつもりだった」とおっしゃり、息子さんは「折半のつもりでいた」と、その場で初めて認識のズレに気づかれました。
悪気があったわけではなく、それぞれが「相手はこう思っているだろう」と勝手に想像していただけなんですよね。結局その場では結論が出ず、後日改めてご家族で話し合われたそうですが、担当していた私も少し胸が痛くなった記憶があります。同じ思いをするご家族をもう一組でも減らせたら、という気持ちでこの記事を書いています。
費用分担で揉めやすいご家庭ほど、実は見積書の読み方を工夫するだけで空気が和らぐことがあります。たとえば足場代や高圧洗浄費のような共通部分と、ベランダ防水や破風板のように「主に使っているのはどちらの世帯か」がはっきりしている部分を、業者に分けて書いてもらうという方法です。
すべてをきっちり案分する必要はないと思っています。ただ、内訳が見える化されているだけで、「なんとなく多く払わされている気がする」という不安は和らぐものです。福岡のあるお客様は、二階部分の外壁が広く傷みも激しかったことから、面積比を参考にしながらも最終的には「気持ちよく折半」を選ばれていました。数字の正しさより、納得感のほうが大事な場面もあるのだと感じています。
ご家族だけで話すと、どうしても遠慮や気遣いが先に立ってしまいます。そういうとき、業者や第三者の窓口が「一般的にはこういう分け方をされるご家庭が多いです」と客観的な情報を挟むだけで、話がまとまりやすくなることがあります。私たちがご相談を受ける中でも、費用分担そのものに口を出すことはしませんが、見積書の内訳をわかりやすく整理するお手伝いはできるようにしています。
先日も、長野県のお客様から「親とお金の話をするのが気まずくて先延ばしにしていた」というご相談をいただきました。工事の話し合いをきっかけに、久しぶりに家族でゆっくり話す時間ができたと聞いたときは、こちらまでほっとした気持ちになったのを覚えています。