工事が完了した直後というのは、お客様にとって一番気持ちが緩む瞬間だと思うんです。長かった足場もなくなり、家がきれいになった達成感もある。そのタイミングで「ご紹介いただけたら次回の工事代金から○万円引きます」といったキャンペーンを案内されると、悪い提案ではないはずなのに、なんとなく気が重くなってしまうという声を聞きます。
紹介制度自体は決して珍しいものではありませんし、良い仕事をした業者が満足したお客様から自然に広がっていくのは、業界としても健全な形だと私は思っています。ただ、それが「お願い」という形で施主側に持ちかけられると、話は少し変わってくるんですよね。
以前、長野県のお客様から電話でこんな相談を受けたことがあります。工事は満足のいく仕上がりだったそうなのですが、担当者から「お隣の〇〇さんも屋根が傷んでいるように見えるので、良ければお声がけいただけませんか」と、ご近所の家の状態まで指摘されながら紹介を頼まれたというんです。
お客様としては、工事の満足度と、ご近所づきあいの中で紹介をお願いされることは、まったく別の重さを持っているんですよね。「うちの塗装は良かったけど、お隣の家の状態まで私が言うことじゃない」と、電話の向こうで少し困ったような声をされていたのを、今でも覚えています。
私が思うに、紹介をお願いするタイミングとしてふさわしいのは、工事が終わってすぐではなく、ある程度の期間が経って仕上がりに問題がないと施主自身が実感できてからだと考えています。塗装の不具合というのは、雨が降ってみないと分からない部分や、季節をまたいでみないと見えてこない部分があるからです。
完成直後の高揚感の中でお願いされてしまうと、施主は自分の体験に確信が持てないまま人を紹介することになりますし、もし後から不具合が出た場合に、紹介した側もされた側も気まずい思いをすることになりかねません。信頼できる業者ほど、こうした時間差を理解して急かさない印象があります。
弊社は複数の業者を比較していただく仕組みを提供している立場なので、紹介そのものに関わることは基本的にありません。ただ、加盟店の担当者たちには「紹介をお願いするのは、施主が本当に納得してから」と繰り返し伝えています。工事直後の勢いに乗って頼み込むようなやり方は、その場では紹介につながっても、長い目で見ると業者への信頼を削ってしまうと思うからです。
お客様の側も、断りにくいと感じたら「もう少し様子を見てから考えたい」と伝えて構わないはずです。紹介は施主から自然に生まれるものであって、業者から急かされて成立するものではない。そのくらいの距離感を、お互いが持てたらいいなと思っています。