「通常80万円のところ、モニター価格で40万円」。こうした表示を見ると、お得だと感じるのが自然だと思います。ただ、その「通常価格」がどうやって決まっているのか、立ち止まって考えたことはあるでしょうか。
業界に身を置いて20年になりますが、この「通常価格」の設定基準が業者によってかなり幅があると感じています。相場よりかなり高めに「通常価格」を設定し、そこから割り引くことで安く見せる、という手法を使う業者も一部にはあるようです。もちろんすべての値引きが不誠実というわけではありません。ただ、値引き幅の大きさだけで判断するのは危ういなと感じています。
忘れられないお話があるんです。長野県のあるお客様から、契約直前にお電話をいただきました。「モニターになれば30万円安くなると言われたのですが、これって本当にお得なんでしょうか」というご相談でした。
詳しくお話を伺うと、モニターの条件は施工中の写真をSNSで公開すること、それだけでした。写真を公開するという条件自体は悪いことではないのですが、その対価として提示された30万円という金額が、そもそもの見積もり内容に見合っているのか、判断できる材料がお客様の手元になかったんですよね。結局そのお客様には、他の業者から相見積もりを取っていただき、金額の妥当性を確認してから契約を進めていただきました。
こういう場面に立ち会うたびに、価格の「見せ方」と「中身」は別物なんだと痛感します。
私がお客様にいつもお伝えしているのは、割引率の大きさではなく、複数の業者から見積もりを取って金額を並べてみてほしい、ということです。数字を一つだけ見せられると、それが高いのか安いのか判断のしようがありません。
データを見ると、同じ規模の戸建てでも、坪数や塗料のグレードによって適正な価格帯には幅があります。ですから「安くなった金額」ではなく「その金額が工事内容に対して妥当かどうか」という視点で見ていただきたいんです。これは特別なことではなく、他の高額な買い物をするときと同じ感覚だと思います。
誤解のないようにお伝えしたいのですが、期間限定の割引やモニター制度そのものを否定するつもりは全くありません。繁忙期と閑散期で工事の依頼数に差がある業界ですから、閑散期にお客様へお得な形で還元する取り組みには意味があると思っています。
大切なのは、その言葉に急かされて判断を急がないこと。「今だけ」という言葉を聞いた時こそ、一度持ち帰って考える時間を作っていただきたいなと思います。長く付き合う家のことですから、その数日はきっと無駄にはなりません。