外壁塗装の見積もりを何社かで比べていると、金額の内訳の中に「足場代」という項目が目に入ると思います。数十万円になることも珍しくない項目なので、そこを削れると聞けば心が動くのは自然なことです。ただ、この「梯子で対応します」という言葉の中身は、業者によってかなり幅があるんですよね。
前職で窓口を担当していた頃、埼玉県のお客様から「足場なしでいいと言われたので契約したが、仕上がりに納得がいかない」というご相談をいただいたことがあります。話を伺うと、2階部分の軒下や角の部分に塗り残しのようなムラがあり、しかも業者に電話をしてもなかなか繋がらないという状態でした。梯子で届く範囲というのは、想像以上に限られているんです。
梯子は基本的に一点で体を支える形になるので、両手をしっかり使って作業できる範囲がどうしても狭くなります。高圧洗浄で汚れを落とす工程でも、脚立や梯子からでは死角ができやすく、コケや汚れが残ったまま上から塗ってしまうということも起こり得ます。塗料の乗りが悪いところは数年後に色あせが早く出てくることがあり、後から「あそこだけ先に傷んできた気がする」と気づかれるお客様も見てきました。
もちろん、平屋や部分的な補修など、梯子で十分に対応できる工事があるのも事実です。すべての梯子作業が問題というわけではなく、建物の高さや形状に対して本当に妥当なのかどうかが大事なところなんですよね。
目安としては、2階建て以上の外壁全体を塗る工事であれば、足場を組んで安定した作業スペースを確保するのが基本的な考え方になります。屋根の形状が複雑だったり、隣家との距離が近く作業できる角度が限られていたりする場合は、なおのこと足場の必要性が高くなります。逆に、平屋の一部補修や、雨樋・破風板といった付帯部の部分塗装であれば、梯子や脚立での対応が現実的な場合もあります。
信頼できる業者さんであれば、なぜ足場が必要なのか、あるいはなぜ今回は不要と判断したのかを、図面や写真を示しながら説明してくれます。理由の説明がなく「安くなりますから」の一言だけで済まされる場合は、少し立ち止まって考えてみてほしいなと思っています。
見積書をもらったら、足場の有無だけでなく「なぜその工法なのか」という理由が書かれているか、あるいは口頭で説明してもらえるかを確認してみてください。梯子対応の提案を受けた場合は、「塗り残しが出やすい箇所はどこか」「高圧洗浄はどの範囲まで行うのか」を聞いてみるのも一つの方法です。質問に対して具体的に答えてくれるかどうかは、その業者さんの姿勢を知る手がかりになると感じています。
価格差の理由を丁寧に説明できる業者さんと、そうでない業者さんの差は、契約後の対応にもそのまま表れることが多いというのが、これまで数多くの現場を見てきた中での実感です。