塗料を吹き付けで仕上げる工法は、刷毛やローラーに比べて仕上がりが均一になりやすい一方、風にとても弱いという性質があります。本来であれば、その日の風速を見て「今日は吹き付けをやめて刷毛に切り替える」といった判断が必要なんですよね。ただ、工期がぎっしり詰まっている業者ほど、多少の風なら構わず作業を進めてしまうことがあるのも事実です。
長野県にお住まいのお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。隣家の駐車場に停めてあった黒い車に、白い塗料の細かい粒が点々と付いてしまったというお話でした。ご本人は在宅していて、風で何かが舞っているのは感じていたそうですが、まさか隣の車にまで届いているとは思わなかったそうです。お隣との顔を合わせづらい空気になってしまったと、電話越しに沈んだ声で話されていたのを覚えています。
きちんとした業者は、足場を組む前に周辺の建物の配置と風向きを確認し、境界側の養生ネットを自社の敷地より外側まで張り出すことがあります。隣家の許可を取った上で、洗濯物を干す時間帯を事前にすり合わせておくところもあります。手間のかかる作業ですし、正直なところ職人さんの負担も増えるのですが、この一手間があるかないかで、工事後のご近所付き合いがまったく違ったものになります。
一方で、見えている範囲だけ養生して「これで十分」としてしまう業者もいます。境界からはみ出す部分まで気を配れるかどうかは、契約前の見積書だけではなかなか見えてこない部分でもあるんです。
万が一、塗料が近隣の車や物干し竿に付着してしまった場合、修理や洗浄の費用は誰が負担するのか。ここではっきりしておきたいのが、業者が「工事賠償責任保険」に加入しているかどうかです。加入していれば、こうした第三者への損害も保険で対応できるケースがあります。加入していない業者だと、費用交渉が長引き、お客様が板挟みになってしまうことも見聞きしてきました。
静岡県のお客様は、業者が保険未加入だったために、隣家との修理費用のやり取りをご自身で仲介する羽目になり、工事が終わった後も何週間か気の休まらない日々を過ごされたと話してくれました。工事そのものは問題なく終わったのに、最後にこうした形で疲れてしまうのは、本当にもったいないと感じます。
難しいことを調べる必要はなくて、契約前に「強風の日は作業を止めますか」「工事賠償責任保険には入っていますか」と聞いてみるだけで、業者の姿勢はかなり見えてきます。即答できる業者は、日頃からこうした事態を想定して現場を回しているところが多い印象です。逆に言葉を濁すようであれば、少し立ち止まって考えてみてほしいと思います。