前職で対応していた頃、ある奥様からお電話をいただいたことがあります。契約時に見せてもらった説明では順調に進むはずだったのに、いざ工事が始まると、朝になって初めてその日誰が来るのか分かる、という状態が続いていたそうです。洗濯物を干していいのか、車を出していいのか、そのたびに現場の職人さんに聞くしかなく、「毎朝人質みたいな気分でした」とおっしゃっていたのを今でも覚えています。
工程表というのは、いつ足場を組み、いつ高圧洗浄をして、いつ下地処理、いつ塗装に入るかを示した予定表のことです。当たり前のように思えますが、これを最初にきちんと渡してくれる業者と、口頭で「順番にやっていきます」で済ませてしまう業者とが、現場には両方存在しています。
工程表があれば、洗濯物を外に干せない日、車を移動させておくべき日、窓を開けられない日が事前に分かります。在宅で仕事をされている方であれば、大きな音が出る高圧洗浄の日を避けて打ち合わせを入れる、といった調整もできます。逆にこれが分からないと、毎朝スマホで天気予報を見るように、その日の予定を職人さんに確認するところから一日が始まることになってしまいます。
もうひとつ大事なのは、工程表は「約束された作業が本当に行われたか」を後から振り返る手がかりにもなるということです。乾燥期間をきちんと取ったか、塗り重ねの順番は守られたか。工程表と見比べることで、お客様自身が工事の進み方を確認できるのです。
工程表をきちんと作らない業者がすべて悪いというわけではありません。ただ、こうした業者に共通しているのは、複数の現場を同時に抱えすぎていて、職人さんの手配そのものが前日にならないと決まらない、という事情を抱えているケースが多いように感じます。天候によって順番が変わることは工事の性質上どうしてもありますが、それでも「今週はこの順番で進める予定です」という大枠さえ示せない業者には、少し注意深くなってもいいと思います。
契約の段階で「工程表はいただけますか」「変更があった場合はいつ連絡をもらえますか」と聞いてみてください。ここで嫌な顔をせずに答えてくれる担当者かどうかで、その後のやり取りのしやすさがある程度見えてきます。
先日も、工程表を毎週末にLINEで送ってくれる業者に出会って安心した、という声を聞きました。紙一枚、メッセージ一通のことですが、そこに現場を大事にしている姿勢が表れるのだと、私は思っています。
工程表は工事の主役ではありませんが、お客様が安心して日々を過ごせるかどうかを左右する、小さくて大きな存在です。契約前にひとこと確認するだけで防げる不安があります。同じような戸惑いを抱える方を一人でも減らせたらと、今回このお話をお伝えしました。