外壁塗装の契約が決まると、多くの方はほっと一息つかれます。工事の日程や色の打ち合わせは細かく確認するのに、近隣への挨拶回りについては「そのあたりは業者さんがやってくれるんですよね」と、なんとなく任せてしまっている方が多いんですよね。契約書や見積書に「近隣挨拶」という項目がきちんと明記されていることは少なく、口約束のまま工事当日を迎えてしまうことも珍しくありません。
前職で相談を受けていた頃、こうした思い込みのすれ違いから、工事が始まってから施主とご近所の間に気まずい空気が流れてしまうケースを何度も目にしてきました。業者は業者で「うちは基本的に両隣とお向かいだけ回ります」というスタンスを決めていたりして、施主が想定していた範囲とずれてしまうことがあるのです。
忘れられないお話があるんです。長野県にお住まいのお客様から、工事が始まって数日経った頃にお電話をいただいたことがありました。「裏のお宅から、足場の音も塗料の臭いも何も聞いていなかったと苦情が来てしまって」という内容でした。お話を伺うと、業者は道路に面した正面と両隣にしか挨拶に伺っておらず、裏手にあたるお宅は挨拶の範囲に入っていなかったそうです。
そのお客様は「業者さんに任せておけば全部済むものだと思っていました」とおっしゃっていて、私自身、その言葉が今でも心に残っています。挨拶回りの範囲を契約前に一度すり合わせておくだけで、防げたかもしれないトラブルだったのではないかと思うのです。
業界に身を置いて20年近く経った今でも感じることですが、近隣挨拶のやり方は会社によって本当にバラバラです。両隣とお向かいの3軒だけを回る業者もあれば、裏の家や斜め向かいまで含めて7〜8軒を回る業者もあります。手土産を持参する会社もあれば、簡単な挨拶状をポストに投函するだけで済ませる会社もあるのです。
どちらが正しいという話ではありません。ただ、この差を知らないまま「業者に任せているから大丈夫」と思い込んでしまうと、工事が始まってから思わぬところでほころびが出てしまうことがあるという話です。特に足場が隣家の敷地に近づく場合や、住宅が密接して建っている地域では、挨拶の範囲が結果を大きく左右するように感じています。
契約の際に、近隣挨拶をどの範囲まで、いつ頃行うのかを一度尋ねてみてほしいと思っています。裏手や斜め向かいまで手が回っていないようであれば、範囲を広げてもらえないか相談してみる価値はあると思います。工事の看板を出すだけでは伝わらないことも多く、直接顔を合わせて一言伝えるというひと手間が、後々の印象を左右するものなんですよね。
それとは別に、施主ご自身が工事の数日前に一言挨拶に伺うだけでも、ご近所の受け止め方は大きく変わります。業者の挨拶と施主ご自身の挨拶、両方があることで、工事期間中の空気がずいぶん柔らかくなるものです。長い付き合いになるご近所との関係を、工事の数日間の気配りで守れるのであれば、それに越したことはないと思っています。