以前から「特定空家」に指定されると固定資産税の優遇が外れる、という話はよく耳にしていました。ただ2023年の法改正で、その手前の段階として「管理不全空家」という区分が新設されたことは、まだあまり知られていないように思います。窓が割れている、屋根が崩れている、といった深刻な状態でなくても、外壁のひび割れや雨漏りの兆候が続いている段階で、行政から指導の対象になり得るようになったのです。
この話をお客様にすると、たいてい驚かれます。「うちはまだそこまでひどくないのに」とおっしゃるのですが、制度の趣旨は「特定空家になる前に手を打ってもらう」ことにあるようで、外壁の劣化はまさにその判断材料のひとつに数えられています。
外壁を触ると手が白く粉をふく、いわゆるチョーキング現象や、細かなひび割れは、住んでいる家であればメンテナンスの目安として見ていただければ良いものです。ただ空き家の場合、それを見つける人がいません。何年も誰の目にも触れないまま進行し、気づいたときには基礎の水回りにまで影響が出ていた、ということも実際にありました。
長野県のあるお客様は、遠方に住むお母様が施設に入られたあと、実家を年に一度帰省したときにしか見に行っていませんでした。久しぶりに訪れた際、外壁の色があせて艶がなくなっているのを見て「これは何かした方がいいのでしょうか」とお電話をいただいたのです。現地を見せていただくと、ひび割れから雨水が入り込み、内側の木部まで傷み始めている箇所がありました。空き家だからと後回しにせず、もう少し早く相談いただけていたら、と正直なところ思うお話でした。
「管理不全空家」に指定されると、市区町村から助言や指導が入り、それでも改善されない場合は住宅用地の固定資産税特例が解除される可能性があります。更地と同じ課税水準になり、税負担が数倍に膨らむケースがあると聞きます。空き家を「そのうち売るか、そのうち住むか」と迷っている間に、こうした行政の目線が変わってきていることは、知っておいて損はないはずです。
誤解のないようにお伝えしたいのですが、外壁塗装さえすれば指定を免れる、という単純な話ではありません。あくまで建物全体の管理状態が見られるものです。ただ、外観の劣化は行政が現地確認をする際にも分かりやすい判断材料になりやすく、放置しないことの意味は小さくないと感じています。
空き家の外壁塗装は、住んでいる家の工事とは少し様子が違います。工事中の立ち会いが難しく、近隣への配慮も普段以上に必要になりますし、そもそも「お金をかけてまでやる意味があるのか」と迷われる方も多いです。それでも、相続した実家を将来どうするか決めかねている間の数年を、資産として保てる状態にしておくという考え方もあるのではないかと思っています。
先日も、空き家になって3年ほど経つお宅の相談を受けました。売却するか賃貸に出すか、まだ家族で結論が出ていないとのことでしたが、外壁の状態だけは維持しておきたいというご希望でした。結論を急がなくても、建物の価値を守る選択肢はあります。