前職の窓口業務をしていた頃、こんなお電話をいただいたことがあります。2年ほど前に外壁塗装をお願いした会社に、コーキングの浮きが気になって連絡したところ、電話番号が使われていない、と。調べてみると、その会社は別の同業者に事業を譲渡していて、社名も所在地も変わっていました。 新しい会社に問い合わせても、「以前の会社の保証については把握していません」という対応だったそうです。工事自体は丁寧で、お客様も当時は満足されていたと聞いていたので、余計にやるせない気持ちになったのを覚えています。
業界に身を置いて20年になりますが、ここ数年で「廃業」ではなく「譲渡」「承継」という選択をする会社が増えてきた実感があります。職人の高齢化と後継者不足が背景にあって、社長一人の技術と信用で成り立っていた会社ほど、譲渡という形での存続を選びやすいのだと思います。
これ自体は悪いことではありません。むしろ、廃業して連絡先ごと消えてしまうより、どこかの会社が引き継いでくれる方が施主にとっては望ましい場合もあります。問題は、その引き継ぎの中身がお客様に見えにくいという点なんですよね。
ここが一番お伝えしたいところです。工事後にもらう保証書には、多くの場合「発行者」として施工会社の名前が入っています。この保証が第三者機関(塗料メーカーや瑕疵保険法人)によるものであれば、施工会社が変わっても保険自体は生きていることが多いです。一方で、施工会社が独自に発行している自社保証は、会社の体力や意思に左右されます。承継先の会社が「前の会社の約束までは引き継ぎません」と判断してしまえば、それで終わってしまうことも起こり得ます。
契約時にこの区別を説明してくれる営業さんは、正直なところ多くありません。悪気があるわけではなく、そこまで踏み込んで話す習慣が業界にないだけなのだと思います。
難しいことをする必要はありません。「この保証は御社が発行するものですか、それとも第三者機関のものですか」と一言尋ねるだけで、答え方に差が出ます。あわせて、建設業許可を持つ会社であれば国土交通省のサイトで行政処分歴や許可の状況を確認できますので、契約前に一度目を通しておくと安心材料になります。
先日、あるお客様が「会社の規模より、担当者の人柄で決めました」とおっしゃっていて、その気持ちはよく分かるんです。ただ、10年、15年という保証期間を考えると、担当者個人ではなく法人としての継続性にも、少しだけ目を向けてもらえたらと思っています。