比較マッチングサービスというのは、基本的に、施工業者さんから広告費やマッチング費用をいただくことで運営が成り立っています。お客様からは直接費用をいただかないので、「無料で使える」という印象が強いと思うんですよね。
それ自体は仕組みとして自然なことです。ただ、私が10年近くその現場にいて感じていたのは、「サイトの都合」と「お客様の都合」が、必ずしも一致しないケースがある、ということでした。たとえば、サイトに登録している業者さんのラインナップが地域によって偏っていたり、1件のお問い合わせに対してマッチングできる件数に制限があったりする場合もあります。それでも「複数社を比較した」という体験は得られるので、課題が表に出てきにくいんですよね。
業界の内側に長くいて感じていたのは、「仕組みが悪い」のではなく、「お客様が仕組みを知らないまま使っている」ことのほうが、むしろ問題だということでした。
前職の後半のことです。ある夏、関東のあるお客様からお問い合わせの電話をいただきました。「サイトを通じて3社に見積もりを依頼したのに、実際に連絡をくれたのは1社だけで、しかもその業者さんも工事の途中から連絡が取れなくなって…」というお話でした。
話を聞きながら、胸が痛くなったのを覚えています。そのお客様は「比較した」つもりでいたのに、実際にはほとんど選択肢がなかった。そして唯一の選択肢が、残念な業者さんだったわけです。サイトを運営する側としては、「複数社が登録されている」という事実はあります。でも、登録されていることと、実際に動いてくれること、そして誠実に仕事をしてくれることは、別の話なんですよね。
「私に何かできることがなかったか」と、今でもたまに思い出す出来事です。こういった経験が重なるにつれて、「もっとお客様の側に立てるサービスをつくりたい」という気持ちが、じわじわと育っていきました。前職を離れてから気づいたことがあるんですが、あのお客様のような経験をされた方は、決して少なくなかったということです。それが、比較サービスというカテゴリー全体への不信感にもつながっていたかもしれない、と思うんですよね。
一括見積もりサイト自体は、使い方次第でとても力強い味方になります。「使うな」ということではなく、「仕組みを理解した上で使ってほしい」というのが、私の気持ちです。
サイト経由で来た業者さんのことは、その場でもう決めなくていいんですよね。「比較のきっかけ」として使いながら、業者さんの建設業許可の有無、損害賠償保険の加入状況、施工実績、そして「この人に任せて大丈夫か」という感覚を、きちんと確かめる作業を省かないでほしいのです。サイトが「審査済み」「優良」と紹介していても、それが最終的な答えではありません。審査の内容や厳しさは、サービスによってかなりまちまちなのが実態です。
また、比較サイトを選ぶときは、そのサービス自体が業者さんをどのように審査しているかも、確認していただきたいと思っています。審査基準を公表しているか、クレームがあったときにどう対処するか——そういったことが明示されているサービスのほうが、信頼の置きやすいものになると感じています。サイト経由の業者さんが「良さそうだな」と思ったときでも、可能であれば地元の口コミや施工実績を別途確認してみてください。
前職で長く働く中で、「もっとお客様の側に立てるサービスがあれば」という気持ちは、ずっとありました。業界の仕組みを知っているからこそ、どこに課題があるかも見えていたんですよね。
比較サービスに携わる側には、「お客様に喜んでもらう」ことと「サービスとして成立させる」ことの間で、葛藤が生まれる場面があります。業者さんから費用をいただきながらも、お客様の利益を最優先に考える——これはとても難しいことです。でも、そこを諦めたらサービスとして意味を失うとも思っているんですよね。
弊社を立ち上げた今も、そこは変わらず向き合い続けているところです。一括見積もりサービスを使うときは、ぜひそういった視点も持ちながら使っていただければ、という気持ちで書きました。