家を建ててから五年、十年と経つと、当時お世話になったハウスメーカーから「定期点検のご案内」という葉書やメールが届くことがあります。担当だった営業の方の名前が添えられていたりすると、懐かしさも手伝って、つい心を許してしまうものなんですよね。
外壁の色あせや、コーキングの劣化を指摘されると、「ここまで見てくれるなら、そのまま塗装もお願いしよう」という流れになるのは、ごく自然な感情だと思います。前職で数多くのお客様と接してきましたが、こうした「最初に建ててもらった会社への信頼」を理由に、他の業者と比べることなく契約を決められる方は珍しくありませんでした。
忘れられないお話があるんです。長野県にお住まいのお客様から、ハウスメーカー経由で外壁塗装の見積もりをいただいたのだけれど、金額が思ったより高くて、これは普通なのかと相談を受けたことがありました。
見積書を拝見すると、実際に足場を組んで塗装するのは、そのハウスメーカーと契約している地域の塗装会社で、ハウスメーカー自身が塗料を選んだり刷毛を持ったりするわけではないということが分かりました。窓口として管理してくれる分の費用が上乗せされている、という説明を受けて、そのお客様は「知らなかった」とおっしゃっていました。データを見ると、こうした管理費が含まれた見積もりは、直接施工会社に頼んだ場合より高くなる傾向がある案件が複数件ありました。
誤解のないように言っておきたいのですが、ハウスメーカー経由で塗装を頼むこと自体が良くないという話ではありません。書類のやり取りが一本化されていたり、新築時の保証と絡めて考えてもらえたりする安心感は、確かにあります。年齢を重ねたご両親の家を見てもらう場合など、窓口が一つで済むことをありがたく感じる方もいらっしゃいます。
ただ、その安心感の裏側にどんな仕組みがあるのかを知らないまま、言われた金額をそのまま払うというのは、少しもったいないと思っています。仕組みを知ったうえで選ぶのと、知らずに流されるのとでは、同じ契約でも納得感がまるで違ってくるからです。
もし新築時のハウスメーカーから点検の案内が届いたら、まず「実際に施工するのはどこの会社か」を尋ねてみてほしいと思います。担当窓口と施工会社が別であること自体は珍しくありませんが、それを教えてもらえるかどうかで、その会社の姿勢がなんとなく見えてくるものです。
そのうえで、もう一社だけでも見積もりを取ってみることをお勧めしています。金額を比べるためというより、提示された内容が妥当かどうかを確かめる物差しを持つためです。急かされて即決する必要はありませんし、点検自体は無料でも、そこから先の契約を急ぐ理由にはならないはずです。