長野県のあるお客様から伺ったお話です。ご主人の転勤が急に決まり、引っ越しまでの期間が限られている中で、外壁塗装の契約だけは前から決めていたそうです。工事の見積もりを取る段階では、色や塗料のグレードの相談に時間を使い、着工日と引っ越し予定日を突き合わせることまでは頭が回らなかったとおっしゃっていました。
結果として、引っ越し業者のトラックが到着した日、玄関の前には足場と養生シートが張られたままだったんです。搬出入のたびにシートをめくって職人さんに声をかけなければならず、荷物を運ぶ人も塗装をしている人も、お互いに気を遣う一日になってしまいました。
外壁塗装の足場や養生シートというと、玄関先の話だと思われがちなんですが、実際にはベランダや掃き出し窓からの搬出入経路もふさがれてしまうことがあります。大きな家具や家電を窓から出し入れする予定があるお宅ほど、この影響は大きくなります。
養生シートで家全体を覆う期間は、光や風の通りも普段とは変わります。荷造りの最中に室内が思ったより暗くて作業がしづらかった、というお話を伺ったこともあります。引っ越し準備というのはただでさえ慌ただしいものですから、そこに工事特有の不便が重なると、気持ちの余裕まで削られてしまうものなんですよね。
工事会社の側から契約時に「お引っ越しのご予定はありますか」と聞いてくれるところもあれば、聞かれないまま進んでしまうところもあります。前職で現場の調整に関わっていた頃、搬出入の日だけ養生シートの一部を外して通路を確保する、足場の組み方を玄関側だけ後回しにする、といった工夫をしている業者さんを何度も見てきました。ちょっとした声かけと現場の工夫で、暮らしへの影響はずいぶん変わるものです。
逆に、工程だけを効率よく詰め込むことを優先してしまう業者さんだと、住む人の生活動線まで気が回らないことがあります。悪気があるわけではなく、単純に「聞かれなかったから答えなかった」というだけのすれ違いだったりもするんです。
引っ越しの予定がある場合は、契約前の打ち合わせの段階で日程を業者に伝え、できれば現地で家具の搬出経路まで一緒に確認しておくことをお勧めしています。エアコンの入れ替えや大型家電の設置業者が別に入る予定がある場合も、同じタイミングで伝えておくと調整がしやすくなります。
先日も、進学を控えたお子さんのいるご家庭から似たようなご相談をいただきました。荷物の搬出だけでなく、新生活に向けた家財の搬入もあるとのことで、工期の後半に数日だけ足場の一部を開けてもらえないか、現場の職人さんと直接相談していただいたそうです。小さなことのようですが、こうした一言があるかないかで、工事期間中の暮らしやすさはずいぶん違ってくるのだと感じています。