電柱から家に伸びてくる光回線のケーブルは、外壁に取り付けられた小さな金具やステップルで固定されているだけのことが多く、見た目以上に頼りない状態で這わされています。足場の支柱を立てる位置、高圧洗浄のノズルを振り回す角度、脚立を立てかける場所。そうした一つひとつの動きの延長線上に、この配線があることに、業者も、そして私たち自身も、なかなか気づきません。
見積書や図面には、まずこの配線のことは書かれていません。塗装業者からすれば「通信会社の設備」という認識で、自分たちの工事範囲の外にあるものだと考えている場合もあります。だからこそ、誰も悪気なく、うっかり触れてしまうのです。
埼玉県のお客様から伺った話です。在宅で仕事をされている方で、足場を組み立てる日の朝、パソコンの画面が急に固まってしまったそうです。原因を調べると、外壁の引き込み線が足場の支柱に引っかかって外れてしまっていました。オンライン会議の直前だったこともあり、かなり慌てたとおっしゃっていました。
業者に連絡したところ「うちが切ったかは分からない」という返答で、結局、通信会社に連絡して復旧の手配をするまで数日かかったそうです。仕事に支障が出たことよりも、誰も責任を認めてくれなかったことのほうがつらかった、とお客様は話してくれました。こういう話を聞くたびに、こちらの胸も痛みます。
まず、外壁のどこに配線が這っているか、契約前の現地調査の段階で業者と一緒に確認しておくことをお勧めします。特に在宅で仕事をされている方や、見守りサービス・防犯カメラなど回線が止まると困る設備がある方は、工事の日程を伝えて配線周りの養生をお願いしておくと安心です。
また、万が一切れてしまった場合の対応が契約書や約款にどう書かれているかも、見ておいてほしいところです。何も書かれていない業者も少なくありませんが、それは「起きたことがないから」ではなく、単に想定していないだけということもあります。
長野県の別のお客様の話ですが、高圧洗浄の最中に配線を傷めてしまった業者が、その場ですぐに通信会社へ連絡を入れ、復旧の立ち会いから費用の負担まで自分たちで手配してくれたことがありました。お客様は「壊されたこと自体より、すぐ動いてくれたことに安心した」と話していて、私自身もこの業界に長くいる中で、こういう対応こそが信頼につながるのだと改めて感じさせられました。
逆に、こちらから指摘するまで気づかないふりをする業者や、通信会社との間に立とうとしない業者もいます。工事の技術そのものだけでなく、想定外のことが起きたときにどう動くか。そこに、業者の本質が出るように思います。
外壁塗装の主役は色や塗料ですが、その裏で家を支えている配線にも、少しだけ目を向けてみてほしいのです。契約前に配線の位置を共有しておくこと、万が一のときの対応を確認しておくこと。小さな手間ですが、工事後の暮らしを守ることにつながります。