親御さんが一人、あるいは二人で住まわれているご家庭では、外壁塗装に関するトラブルが起きやすい条件が重なりがちです。
突然の訪問販売で「今すぐやらないと雨漏りが起きる」「屋根が危険な状態だ」と告げられ、その場で断れずに契約書にサインしてしまう——そういう流れは、決して珍しいことではありません。高齢の方が業者の言葉をそのまま受け取ってしまうのは、悪意があるからでも判断力がないからでもなく、「来てくれた人に失礼なことはしたくない」「丁寧に説明してもらったから信用していい」という、とても自然な感情からなんですよね。
そこに付け込んで強引な契約を促す業者がいることは、20年この業界に身を置いてきた私にとっても、今なお腹の立つ現実の一つです。
今でもはっきり記憶しているお話があります。
埼玉県にお住まいの70代のお母様が、突然やってきた業者から「このまま放置すると大変なことになる」と言われ、その場で外壁塗装の契約をしてしまったというケースです。お電話をくださったのは、関西に住む娘さんでした。「母から来週工事が始まると聞いて、見積書を見たら驚くような金額で……これは普通なんでしょうか」という内容でした。
見積書の内訳を一緒に確認したところ、面積の計算が大まかで、使用する塗料の種類も「良いもの」としか書かれていないような状態でした。娘さんはその日のうちに新幹線でお母様のもとへ向かわれ、クーリングオフの手続きをされたと後日お聞きしました。もし娘さんへの連絡が一週間遅れていたら、期限を過ぎていた可能性がありました。
あのときの娘さんの「気づいてよかった」という声のトーンを、私はいまでも思い出すことがあります。そして同時に、「気づけなかったお子さんも、きっとたくさんいるのだろうな」と。
遠方に住んでいても、できることはあります。
何より大切なのは、「業者が来たら、サインする前に必ず連絡して」という一言を、事前に親御さんに伝えておくことです。多くの親御さんは、子どもに迷惑をかけたくないという気持ちから、一人で業者との対応を抱え込もうとされます。だからこそ、この一言がとても大事なんです。電話でもラインでも構いません。「どんな工事でも、サインの前だけは連絡して」と。
帰省した際に、外壁の状態をスマートフォンで撮影しておいてもらう習慣もお勧めしています。壁を触ったときに白い粉がつくチョーキング現象、目に見えるひび割れ、コーキング材のひびや剥がれ——こういった劣化のサインが写真で手元にあれば、「そろそろ塗り替えを考える時期かもしれない」と、離れていても家族で判断する材料になります。業者から指摘を受けた後に慌てて動くのではなく、事前に家族として状況を把握しておくことが、いざというときの「判断軸」になるんですよね。
帰省のタイミングなどで立ち会えるのであれば、点検や見積もりの場にできるだけ同席してほしいと思います。
業者の側も、ご家族が同席されているだけで対応が丁寧になることがあります——これは、前職で数え切れないほどのやり取りを間近で見てきた私が、確かにそう感じていることです。難しい専門知識は不要で、「見積書の項目が『一式』でまとめられていないか」「使用する塗料のメーカーと商品名が書かれているか」「会社の住所と電話番号が入った名刺があるか」といった点を一緒に確認するだけで、その場の緊張感がまったく違います。
もし同席できない場合でも、見積書の写真をスマートフォンで送ってもらうだけで、遠くから一緒に内容を確認することができます。「分からないから業者に任せよう」ではなく、「分からないから一緒に考えよう」という姿勢で、ぜひ親御さんに関わってみてください。そこから始まる会話が、結果として大きなトラブルを防ぐことにつながっていくと思います。
外壁塗装は、家にとって大きな出費です。
そして高齢の親御さんにとっては、もしかすると最後の塗り替えになるかもしれない工事でもあります。だからこそ、後から「あのとき一緒に考えればよかった」という後悔を、できるだけ減らしてほしいのです。弊社では、複数の業者から見積もりを取って比較していただくお手伝いをしていますが、「親の家の見積書を一緒に見てほしい」というご相談にも、できる限りお応えしています。遠方に住んでいるからと諦めず、気になることがあればまずお声がけください。