外壁塗装の見積もりに屋根の塗装が入っているのは、珍しいことではありません。足場を一度組めば両方の工事ができるので、理にかなっている場合も多いんですよね。
ただ、屋根材の中には、そもそも塗装を前提にしていないものがあります。代表的なのが釉薬瓦(いわゆる陶器瓦)です。表面にうわぐすりを掛けて焼き上げた瓦で、あの色と艶は焼き物そのものの性質なんです。年月が経っても色あせしにくく、塗膜で守る必要は基本的にありません。
一方で、同じ「瓦」と呼ばれていても、セメント瓦やコンクリート瓦は表面の塗装が防水の役目をしているので、塗り替えが必要になります。見た目がよく似ているので、お客様が見分けられないのは無理もないことだと思います。
前職にいた頃、静岡県のあるお客様からお電話をいただきました。「瓦を塗らないと雨漏りすると言われたんですが、本当でしょうか」と。築二十数年、和瓦の切妻屋根のお宅でした。
お話を伺うと、訪ねてきた業者さんから外壁と屋根のセットで見積もりが出ていて、屋根の分だけで数十万円。送っていただいた写真を見ると、艶の残った釉薬瓦で、色あせもほとんどありませんでした。
気になったのは、むしろ棟(屋根のてっぺん)の漆喰が崩れかけていたことなんです。本当に手を入れるべきだったのは塗装ではなく、漆喰の詰め直しと棟の点検の方でした。その後、別の業者さんに見てもらい、漆喰の補修と外壁塗装だけで済んだと聞いて、ほっとしたのを覚えています。
「塗らなきゃいけないものだと思い込んでいました」。最後にそうおっしゃった声が、今も耳に残っています。
釉薬瓦の表面はつるつるしているので、塗料が密着しにくいんです。塗ってから数年で剥がれてきて、まだらな見た目になってしまった、というご相談も複数ありました。
剥がれかけた塗膜が雨水の流れを邪魔してしまう、という話も聞きます。良かれと思ってかけたお金が次のメンテナンスの手間を増やしてしまう。これは、なんとも切ない話なんですよね。
もちろん、瓦屋根なら手入れがいらないというわけではありません。漆喰、棟の固定、割れやずれ、谷の板金。見ておくべきところはちゃんとあります。ただそれは「塗装」とは別の工事だということを、知っておいていただきたいのです。
いちばん簡単なのは「うちの屋根の素材は何ですか」と聞いてみることです。誠実な業者さんなら、屋根材の種類と、なぜ塗装が必要なのか(あるいは不要なのか)を、写真を見せながら説明してくれると思います。
新築時の図面や仕様書が手元にあれば、屋根材の名前が書かれていることもあります。それでも分からなければ、瓦を扱う屋根の専門業者さんにも一度見てもらう。それだけで判断の材料はぐっと増えます。
弊社がご紹介する加盟店さんにも、屋根材を確かめたうえで必要な工事だけを提案してほしいとお願いしています。「ここは塗らなくて大丈夫ですよ」と言える業者さんは信頼していい、と私は思っています。