長野県にお住まいのお客様から、電話でご相談をいただいたことがあります。訪問してきた営業の方に「年内に契約すれば減税の対象になる」と言われ、内容をよく確かめないまま契約書にサインしてしまった、とのことでした。工事が終わり、確定申告の時期になって税理士さんに相談したところ、今回の塗り替え内容では対象にならないと分かり、電話口でとても困っていらっしゃったのを覚えています。「あの時、もう少し聞いておけば良かった」というお声は、今でも耳に残っています。
前職で数多くの契約の場に立ち会ってきましたが、こうした「減税になる」という言葉は、実はそれほど珍しいものではないんですよね。契約を後押しする一言として、あまり深く考えずに使われてしまうことがあるんです。悪気があるとは限りませんが、お客様にとっては人生でそう何度もない大きな買い物です。言葉の重みが、営業する側とお客様側とで違ってしまうことがあるんだと思います。
住宅のリフォームに関する税制優遇には、いくつかの制度があります。ただ、その多くは耐震改修や省エネ改修、バリアフリー化といった特定の工事内容や要件を満たした場合に限られていて、一般的な外壁の塗り替えだけでは対象外になるケースが多いというのが実情です。屋根や外壁の見た目を整えるだけの工事は、制度の対象からは外れてしまうことが少なくありません。
遮熱・断熱性能を持つ塗料を使った工事など、条件を満たせば制度の対象になる場合もあるにはあります。ただ、それも自治体や年度によって内容が変わりますし、対象になるかどうかは工事の仕様や申請のタイミング次第という面が大きく、一律に「対象になります」と言い切れるものではないと私は思っています。制度の名前だけを聞いて安心してしまうのは、少し危ういんですよね。
業界に身を置いて20年近く経ちますが、「減税になります」というたった一言が、お客様の決断をどれだけ左右するか、そばで見てきました。難しい税制の話を細かく説明するより、「お得ですよ」という一言のほうが、契約への背中を押してしまうんですよね。忙しい毎日の中で、細かい制度の条件までじっくり調べる時間を持てるお客様は、そう多くないと思います。
だからこそ、その言葉を使う側には、正確な情報を伝える責任があると思っています。曖昧なまま「お得です」とだけ伝えて契約を急がせるのは、私はあまり好きなやり方ではありません。同じ思いをするお客様をもう一人でも減らしたい、という気持ちで、今日はあえてこの話を取り上げることにしました。
減税や補助金の話が出た時は、その場で契約を決めず、一度持ち帰って税理士さんや自治体の窓口、国税庁のホームページなどで確認していただきたいと思います。営業の方の説明を疑うわけではありませんが、制度の詳細は工事内容や条件によって細かく変わるものですし、書面や公式な情報で根拠を確かめておくと、後から慌てずに済みます。
「減税になりますか」と聞かれたら、根拠となる制度名や条件をきちんと示せるかどうか。それも、業者を見極める一つの物差しになるのではないかと思っています。曖昧な返事しかできない業者であれば、その場での即決は避けたほうが良いかもしれません。
弊社は、あくまで施主様と加盟店様をおつなぎする立場ですので、税務のご相談そのものにお答えすることはできません。ですが、契約を急がされそうな場面で「一度立ち止まって確認する」という選択肢があることだけは、これからも伝え続けていきたいと思っています。工事の内容そのものと同じくらい、そこに添えられる言葉にも、目を向けていただけたらうれしいです。