業界に入りたての頃、先輩から「付帯部の見積もりをちゃんと確認しろ」と言われて、その言葉の意味がピンとこなかったことを覚えています。雨どい、軒天(屋根の裏側にあたる部分)、破風板(屋根の端に取り付けられた板)、窓まわりの帯板——。外壁の色や塗料ばかりに目が行きがちですが、家の外まわりには壁以外にも塗装が必要な箇所がたくさんあるんですよね。
これらをまとめて「付帯部」と呼ぶのですが、業者によってその扱いが全然違います。標準の工事範囲に含んでいるところもあれば、外壁・屋根とは別の費用として計上するところもある。お客様からすれば「外壁塗装をお願いした」という認識でも、実際に何が含まれているかは、見積もりをしっかり読まないと分からないことがあるんです。
前職でマッチング業務を担当していたある時期、静岡のお客様からご連絡をいただいたことがありました。「外壁と屋根をきれいにしてもらったんですが、雨どいがまだ古びたままで。業者さんに聞いたら、見積もりに含まれていなかったと言われて……」と、困ったようなお声で。
お客様は当然、「外まわり全体をきれいにしてもらった」というつもりだったわけです。でも見積もりをあらためて確認してみると、確かに雨どいの記載はありませんでした。業者側の説明が不足していたのは間違いないのですが、見積もり自体に嘘があったわけでもなくて。双方の認識がそもそもずれていたというのが実態で、こういうケースは業界に20年身を置いていると、決して珍しくないと感じています。
問題はその後で、「雨どいだけ追加でやってもらえないか」とお客様が業者に相談したところ、足場がすでに撤去されていたため、もう一度足場を組む費用が別途かかるという話になってしまったんです。工事中にまとめてやっていれば、そこまでの追加費用にはならなかったはず。そのとき感じた「もっと早く伝えていれば」という気持ちは、今も忘れていません。
付帯部のなかでも、軒天や破風板は紫外線と雨に常にさらされていて、外壁より先に傷んでくることがあります。外壁だけ塗り替えて付帯部はそのままだと、見た目のバランスが崩れるだけでなく、傷んだ箇所から雨水が入り込むリスクも生まれます。
もうひとつ気になるのが、付帯部に使う塗料の記載です。外壁には「○○シリコン塗料、2回塗り」と丁寧に書いてあっても、雨どいは「付帯部塗装一式」とだけ記載されていて、塗料の種類も塗り回数も不明、というケースを見てきました。外壁に良い塗料を使っても、付帯部が数年で劣化してしまえば、トータルの仕上がりにも影響が出ます。見積もりを比べるなら、そこまで揃えて見たほうが、実態に近い比較になると思っています。
「この見積もりには、雨どい・軒天・破風板は含まれていますか?」
これだけでいいんです。たったこれだけの確認ですが、業者さんの反応で、説明の丁寧さや誠実さが伝わってくることがあります。「あ、そこまで確認されるんですね」と喜んで一つひとつ説明してくれる業者は、それだけ現場に真摯に向き合っているという印象があります。逆に曖昧な返答が続くようなら、もう少し詳しく聞いてみてください。
工事中に「足場があるうちに付帯部もやりませんか」と提案される場合もあります。これ自体は合理的な提案のことが多いのですが、その場で慌てて決めなくていいように、事前に付帯部の状態と費用の目安を聞いておくと、気持ちに余裕が生まれます。弊社では、お客様が複数の業者から見積もりをご検討いただく際、こうした付帯部の内訳についても確認しやすい環境を整えています。
外壁の色を何にしようか迷われる方はたくさんいらっしゃいます。それはとても大切なことなのですが、同じくらい「この家の外まわり全体を、今回どこまで整えるか」を考えていただけると、工事後の満足度が変わることがあると思っています。
雨どいや軒天の色が外壁と調和してはじめて、「きれいになった」と感じられる方もいらっしゃいますし、外壁だけ新しくなって他が古びたままだと、どこか物足りない印象になることもあるんですよね。「付帯部」というひと言を知っているだけで、見積もりの読み方が少し変わります。その少しの変化が、工事後のすれ違いを防ぐことにつながると思っています。