外壁塗装の商談をしていると、業者から遮熱塗料や断熱塗料、光触媒塗料といった「機能性塗料」を提案されることがよくあります。
前職で多くのお客様の工事に関わってきた中で、ある共通したパターンに気づきました。機能性塗料を選んで後悔されたお客様の多くは、「業者に勧められたから」「せっかくならいいものを」という動機で選んでいたんです。逆に満足されていたお客様は、「自分の家の状況に合っているから」という理由を持って選んでいました。どちらが正解かではなく、「なぜその塗料を選ぶのか」という理由が後悔の差を生むのかもしれない、とその頃から感じるようになりました。
遮熱塗料は、日射熱の反射率を高めることで外壁や屋根の表面温度の上昇を抑える効果があるとされています。日当たりのよい南向きの家や、屋根への塗装では体感しやすい傾向にある一方、北向きや日陰の多い立地では効果を実感しにくいケースもあります。
断熱塗料については、塗膜の断熱性で室内の温度変化を穏やかにするという目的のものですが、住宅全体の断熱性能とのバランスが大切で、塗膜だけで劇的に変わるものではありません。光触媒塗料は、太陽光の力で汚れを分解し雨で洗い流す効果があるとされており、「外壁の汚れが気になる」「次の塗り替えをできるだけ遅らせたい」という方には向いているかもしれません。
ただ、どの機能性塗料も「効果ゼロ」ということはありませんし、「必ずこうなる」とも言えません。あくまで傾向として理解しておくことが大切だと思っています。
長野県のあるお客様のことを今でも覚えています。2階建ての南向きの建物で、夏場に2階がとにかく暑くて困っているとおっしゃっていました。
見積もりの段階で遮熱塗料を提案したところ、最初は「費用が上がるなら普通でいいです」とおっしゃっていたんですよね。ただ、お話を伺ううちに、その夏の暑さで毎年エアコン代がかなりかかっていること、2階の部屋を子どもに使わせたくないくらいの熱さだということが分かってきました。そこで「この立地と構造なら、遮熱塗料が比較的効果を感じやすい条件だと思います。ただ保証はできませんので、最終的にはご判断ください」とお伝えしました。
工事後、そのお客様から「去年より2階が過ごしやすくなった気がする」というお声をいただいたんです。全員にそうなるとは言えません。でも、「そのお客様の状況と合っていたから選んだ」という流れが大切なんだと、あの経験で改めて実感しました。
機能性塗料は通常の塗料と比べて、工事費が大きく変わることもあります。「高ければいい塗料」というわけでも、「安ければ損をする」というわけでもない。
私がお客様によくお伝えしていたのは、「今の外壁に何を求めているか」を先に整理してほしい、ということでした。「とにかく長持ちさせたい」なら耐候性を重視する選択肢があります。「汚れが目立ちにくくしたい」なら光触媒や防汚機能という方向性。「夏の暑さが気になる」という方なら遮熱・断熱という選択になってくる。その優先順位が明確になっていないまま、提案された塗料をそのまま選んでしまうと、後から「本当に必要だったのかな」という気持ちが残りやすいんですよね。
業者が機能性塗料を提案すること自体は、決して悪いことではありません。お客様に適したものを提案するのは、誠実な業者のあるべき姿でもあります。
ただ、工事費が大きくなるほど、「自分でちゃんと選んだ」という感覚が後の満足度にかかわってくると思っています。迷ったときは、業者に「うちの家には特に向いていますか?その根拠も教えてもらえますか」と聞いてみることをお勧めしたいんです。その問いに対して、立地や日当たりの条件を踏まえて丁寧に答えてくれる業者は、お客様のことをきちんと考えてくれている可能性が高いと思います。逆に「おすすめです」だけで終わってしまう場合は、もう少し慎重に判断されてもよいかもしれません。