塗料には、乾燥・硬化するために適した気温というものがあります。多くの塗料メーカーは、気温がおおむね5度を下回ると施工を避けるよう指定しています。塗膜がきちんと硬化しないまま、乾いたように見えてしまうことがあるからです。
ただ現場では、この基準が守られているかどうか、施主側からは確認しづらいんですよね。気温を測っている業者もいれば、そうでない業者もいます。天気予報の最低気温だけを見て「大丈夫でしょう」と判断してしまう現場を、私は前職時代に何度も目にしてきました。
前職で担当していたときのことです。長野県にお住まいのお客様から、「去年の12月に外壁を塗ってもらったのに、春になったら塗膜が浮いてきた」というご相談をいただきました。現地を確認すると、外壁の一部で塗膜が膜のようにめくれ、下地との間に隙間ができていたんです。
詳しく事情を伺うと、工事は年末の繁忙期に組まれ、気温が氷点下近くまで下がる日が続いていたとのことでした。乾く前の塗膜内に含まれる水分が凍結し、体積が膨張したことで密着が壊れてしまった、いわゆる凍害の典型的なケースだったと思います。お客様が「業者さんを信じてお任せしていただけなのに」と、電話越しに声を落とされていたのを今でも覚えています。
業界の事情を知っていると分かるのですが、外壁塗装には繁忙期と閑散期があります。台風シーズンが明けた秋から年末にかけては依頼が集中しやすく、現場のスケジュールがぎっしり詰まりがちです。その中で、本来なら見送るべき気温の日でも、工程を止めずに進めてしまう現場が生まれてしまうのだと思います。
もちろん、寒冷地の施工実績が豊富な業者であれば、養生や乾燥時間の調整、使用する塗料の選定など、気温に応じた工夫を持っています。問題は、そうした知見のないまま冬場の依頼を受けてしまう業者が一定数存在することなんですよね。
寒い地域にお住まいで、冬に近い時期の工事を検討されている方には、施工予定日の想定気温をどう管理しているか、一度聞いてみていただきたいと思います。当日の気温によって工程を延期する判断基準を持っているかどうかは、業者の姿勢を知る手がかりになります。
塗料も、低温対応タイプのものが用意されていることがあります。使用する塗料が施工予定時期の気温に対応しているかどうかも、確認しておいて損はない点だと思います。こうしたやり取りに丁寧に答えてくれるかどうかで、その業者が現場をどれだけ大切にしているかが、なんとなく伝わってくるものです。