山梨県のお客様から、工事が終わって半年ほど経ったころにお電話をいただいたことがあります。外壁の一部にコーキングの浮きが見つかったので、契約したときの書類を引っ張り出して連絡先に電話をかけたところ、繋がった先が思っていた会社と違ったというんです。営業に来たときの車には、全国区で名前の知れたブランドのロゴが大きく貼ってあったのに、契約書に書かれていたのは聞いたことのない三文字の会社名だったと。
お客様は「あのCMでよく見る会社に頼んだつもりだった」とおっしゃっていました。実際にはそのブランドを名乗る加盟店との契約で、施工も保証対応も、そのブランド本部ではなく加盟店側の責任になっていたんです。私も前職でこの手のご相談を何度か受けてきましたが、契約の瞬間に「看板」と「契約主体」が一致しているかを気にする方は、正直あまり多くないというのが実感です。
誤解のないように申し上げておきたいのですが、フランチャイズという仕組み自体を悪く言うつもりは全くありません。研修や施工基準が整っていたり、資材の仕入れルートが安定していたりと、加盟店側にもお客様側にもメリットがある仕組みだと思います。地域に根ざした個人経営の業者にはない安心材料を、看板が肩代わりしてくれている面は確かにあるんです。
ただ、保証やアフター対応の責任が本部にあるのか、契約した加盟店にあるのかは、ブランドによって、あるいは契約の形態によってまちまちなんですよね。ここが曖昧なまま契約が進んでしまうケースを、私は業界に身を置いて20年近く見てきました。
先日も、別のお客様から似たようなお話を伺いました。工事後に細かい仕上がりの不満があり、ブランドの本部サイトに載っていた問い合わせ窓口に連絡したところ「施工した加盟店にご相談ください」という案内が返ってきたそうです。もちろんその案内自体は間違っていないのですが、お客様からすると、CMで見た会社に直接文句を言えないもどかしさを感じてしまったようでした。
こうしたすれ違いは、契約時にほんの少し質問を挟むだけで防げることが多いんです。「保証書はどちらの会社が発行するものですか」「何かあったときの連絡先は本部ですか、それともこちらの店舗ですか」。この二つを聞いておくだけで、後々の安心感がずいぶん変わってきます。
私が弊社でご相談を受けるときにも、看板の大きさや知名度だけで判断せず、実際に工事を担うのがどの法人なのか、その法人が設立から何年くらい経っているのか、といった点を一緒に確認するようにしています。加盟店ごとに経営体力や対応の丁寧さには差があるものですし、それは看板の知名度とは別の話だからです。
契約書に押される角印の社名と、営業マンの名刺や車に書かれた名前が一致しているか。ほんの数秒で確認できることなのですが、契約を急かされる場面では意外と見落としてしまうものなんですよね。
同じ思いをするお客様を一人でも減らしたいという気持ちで、こうした地味だけれど大事な確認ポイントを、これからもお伝えしていきたいと思っています。