外壁塗装を検討されるお客様の多くは、最初に自宅へ来た営業担当と何度もやり取りを重ね、色や仕様、細かな要望を伝えます。その過程で信頼関係のようなものが生まれるのも自然なことだと思うんですよね。ただ、契約が済んで工事が始まると、現場に立つのは営業担当ではなく、現場監督や職人さんであるケースが多いんです。 私自身、前職でこの構造の「隙間」に何度も立ち会いました。営業さんが丁寧にヒアリングしていても、その内容がすべて現場に正確に伝わっているとは限らない。口頭でのやり取りが中心だった場合は、特にそうなんです。
長野県のあるお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。「庭の植木鉢は避けて塗ってほしいと営業さんに伝えたのに、養生シートがかかったまま数日置かれていた」というご相談でした。営業担当は確かにその要望をメモしていたのですが、現場監督への引き継ぎ資料には反映されておらず、職人さんたちはそんな要望があったこと自体を知らなかったんです。 悪意があったわけではありません。ただ、口約束や営業担当の頭の中にしかない情報は、現場には届かないことがある。そのお客様は「言った言わない」の話ではなく、「誰にも悪気はないのに、伝わっていなかった」という状況にとても戸惑っていらっしゃいました。私はその声を聞いて、こういう小さなすれ違いの積み重ねが、施主の不信感につながっていくのだと痛感したのを覚えています。
背景には、営業と施工が分業されている業界の仕組みがあります。会社によっては、営業は契約を取ることが仕事で、現場は下請けの職人さんに任せきりというところも少なくありません。間に現場監督が入っていても、担当する現場数が多く、細かな要望まで目が届かないこともあるんです。 こうした業者がすべて悪いというわけではないんですが、要望が「誰の手元で止まっているか」が施主からは見えにくい、というのが実情だと思います。書面よりも口頭でのやり取りに頼っている会社ほど、こうしたすれ違いは起きやすい傾向があるように感じます。
私がお伝えしたいのは、営業担当を疑ってくださいということではありません。ただ、大事な要望は口頭だけで終わらせず、メールや見積書の備考欄など、形に残る場所に書いてもらうよう頼んでみてほしいんです。「植木鉢は避けてください」も「窓の鍵は開けたままにしないでください」も、些細に思えることほど伝言の途中で抜け落ちやすいものです。 可能であれば、着工前に現場監督や実際に作業する職人さんと顔を合わせる機会を設けてもらうのも一つの方法だと思います。誰が現場に立つのかを知っているだけで、安心感はかなり違ってきますし、業者側の対応の丁寧さを見極める材料にもなります。弊社でも、要望は必ず現場側に書面で共有する体制を大切にしています。