外壁塗装の見積もりは、初めて受け取ると驚かれる方が多いです。足場代だけでも相当な金額になることがありますし、そこに塗料代や職人の手間賃が加わります。「これほどかかるなら、塗料を買ってきてご自身で塗ってしまえば」と思うのは、ごく自然な発想だと私は感じています。
ホームセンターに外壁用の塗料は確かに売られています。動画サイトを調べれば、塗り方を解説した動画も出てきます。材料も情報も手に入りやすい時代になったからこそ、DIYという選択肢が現実感を持って見えてくるんですよね。
前職でマッチング業務を担当していた頃、愛知県にお住まいのあるお客様からご連絡をいただきました。数年前に2階建て住宅の外壁の一部をご自身で塗られたそうで、今回は外壁全体の塗り替えを業者に依頼したい、というご相談でした。
ところが、業者に現地を見てもらったところ「DIYで塗った部分の塗膜が浮いていて、そのまま上から塗ることができない状態です」と言われてしまったんです。既存塗膜を取り除いてから塗り直す補修作業が必要になり、当初の想定より費用がかさんでしまったとのことでした。
塗料の相性が合っていなかったことと、下地処理が十分でなかったことが重なったようです。「費用を抑えようとしたのに、かえってお金がかかってしまった」とおっしゃっていた声が、今でも耳に残っています。お気持ちはまったく間違っていなかっただけに、そのときの複雑な思いは忘れられないんですよね。
まず、高さの問題があります。2階建て住宅の外壁を塗るには、かなりの高所での作業になります。足場なしではしごを使う場合、均一に塗ることが難しくなりますし、安全面のリスクも伴います。
下地処理の判断も、簡単ではありません。外壁塗装は、表面を高圧洗浄で洗い、ひびがあれば補修し、下塗りを施してから中塗り・上塗りと重ねていく工程です。どこかが不十分だと、数年後に剥がれや膨れが起きやすくなります。この「見えない部分の判断」は、経験なしには難しいところがあるんですよね。
塗料の選び方も、奥が深いです。外壁の素材や既存塗膜の種類によって、合う塗料・合わない塗料があります。「外壁用」と書かれていても、それだけでは判断しきれないことがある。前職でマッチング業務を担当していた頃、塗料の相性が原因で塗膜に問題が出たというケースは、複数件ありました。
外壁に白い粉がつくようになってきた状態(チョーキングといいます)や、細かなひびが見え始めている場合は、下地の状態を見極めることから必要になります。こうした状態を適切に処置せずに塗り重ねると、後から剥がれや水の浸入が起きやすくなります。
2階以上の高所が絡む場合や、外壁の面積が広い場合も、安全と品質の両面から、経験を持つ職人にお任せいただいた方がよいと思っています。費用のことを考えると悩ましいのは分かります。それでも、後から補修が必要になったケースを長年見てきた経験から、率直にそう感じているんです。
DIYで対応できる部分は、あります。庭のフェンスや物置などの附属物の塗り直し、あるいは目立ちにくい小さな傷への部分的な補修塗料の使用であれば、ご自身でやり切られる方も多くいらっしゃいます。
大切なのは、「住宅の外壁本体をどこまでプロにお任せするか」の線引きだと私は思っています。費用を少しでも抑えたいというお気持ちを否定したいわけではないんですよね。ただ、後から余分な出費が生まれないよう、選択肢をきちんと整理してほしい——その一心で、今回お伝えしました。