埼玉県にお住まいのお客様から、外壁塗装を終えて三年ほど経った頃にお電話をいただいたことがあります。車庫入れの際にバンパーが外壁の角にぶつかってしまい、塗装が剥がれてしまったとのことでした。業者にタッチアップをお願いしたところ、当時使った色がすでに廃盤になっていて、まったく同じ色は作れないと言われたそうです。
お客様は「たった三年ですよ」と困惑した声で話してくださいました。私も前職でこうした相談を何度も受けてきましたが、傷や汚れは想定していても、色そのものが手に入らなくなるという想像まではなかなか及ばないものなんですよね。
塗料メーカーは数年おきに色見本帳を改訂します。人気のある定番色は残りますが、そうでない色は原料の調達コストや需要の変化を理由に、取り扱いが終了することがあります。特にお客様の要望に合わせて調合する「オーダーカラー」は、配合の記録が残っていても、原料の一部が変わってしまえば厳密には同じ色を再現できないことがあるのです。
長野県のお客様からも似たようなお話を伺いました。増築で外壁の一部を後から足すことになり、以前の色に合わせようとしたところ、メーカーに問い合わせても該当の色番号がもう存在しないと言われたそうです。色見本帳から選んだときには、まさか自分の家の色が数年で消えるとは思わなかった、とおっしゃっていました。
すべての廃盤を防ぐことはできませんが、選び方次第でリスクを下げることはできます。まず、メーカーの標準色(定番ラインナップ)の中から選ぶと、廃盤になりにくい傾向があります。オーダーカラーやシリーズ限定色は個性を出せる分、数年後の入手性という意味では少し不安が残ります。
もう一つお伝えしたいのは、工事の際に余った塗料を少量でも保管しておくことです。缶に色番号とメーカー名、施工年月を書いておくだけで、後日のタッチアップがずいぶん楽になります。弊社でも加盟店には、工事完了時にお客様へ色番号を書いた控えをお渡しするようお願いしています。小さなことですが、数年後に効いてくる備えだと思っています。
もちろん、廃盤リスクだけを気にして無難な色ばかり選ぶ必要はありません。愛着の持てる色を選ぶことも、外壁塗装の大切な価値のひとつです。私がお伝えしたいのは、気に入った色がオーダーカラーや限定色だった場合、契約前に業者へ「この色は廃盤になりやすいか」「なった場合はどう対応してもらえるか」を一言聞いておいてほしいということです。
近い色で全体を塗り直す、部分補修は多少の色差を許容する、といった選択肢を事前に知っておくだけで、いざというときの心構えが変わります。先日も、香川県のお客様が契約前にこの質問をしてくださり、業者から標準色への変更を提案されて選び直したというお話を伺いました。小さな確認が、数年後の安心につながるのだと感じています。