前職で「外壁塗装の窓口」に勤めていた頃、腕の良さで評判の職人さんに次の空き日程を尋ねたことがあります。返ってきた答えは「早くて半年後です」というものでした。まだ経験の浅かった私は、そんなに待たせて施主様は納得してくださるのだろうかと、少し不安に感じたのを覚えています。
けれど実際にその職人さんの現場を見学させてもらって、理由が分かりました。下地の処理一つ、コーキングの打ち替え一つとっても、手を止めて丁寧に確認する姿があったんです。予約が埋まっているのは宣伝がうまいからではなく、頼んだお客様が次のお客様を紹介してくださるからだったんですよね。
業界に身を置いて20年になりますが、この間ずっと言われ続けているのが職人の高齢化と担い手不足です。塗装の技術は一朝一夕では身につかず、下地処理や塗料の扱い方を覚えるだけでも数年かかります。夏場は炎天下、冬場は足場の上で冷たい風にさらされる仕事でもあり、若い世代が入ってきても長く続けるのは簡単ではないと感じています。
数字で語れる部分は少ないのですが、現場の感覚として、独立して10年、20年と続けている職人さんに新しい弟子が付くケースは以前より少なくなった印象があります。技術を持った職人さんが引退すると、その分だけ「安心して任せられる手」が現場から減っていく。そうした流れを、この業界の中でずっと見てきました。
忘れられないお話があるんです。あるお客様から「工期の途中で職人さんが何度も入れ替わった」とご相談をいただいたことがありました。契約時に説明を受けた担当者と、実際に塗る職人さんが別で、しかも日によって顔ぶれが変わる。仕上がりにムラが出て、後から補修をお願いする羽目になったそうです。
人手が足りない現場ほど、無理な人員のやりくりが起きやすくなります。急な受注に対応するために、経験の浅い応援を入れたり、他の現場と掛け持ちさせたりする。こうした業者がすべて悪いわけではありませんが、工期や体制に無理がないかは、契約前に確認しておいた方がいいポイントだと思っています。
「今すぐ来てくれる業者」と「半年待ってでも頼みたい職人さん」、どちらを選ぶかは状況にもよります。ただ、外壁塗装は10年、15年に一度の大きな買い物です。少し先の予定でも、信頼できる手に任せられるなら、それだけの価値はあるのではないかと私は考えています。
弊社にご相談くださるお客様には、工期の余裕を持って早めに動くことをお勧めしています。台風のあとや年度末など、業界が繁忙期に入る前に相談を始めておくと、選べる職人さんの幅も広がるからです。急かされるように契約を決めるのではなく、腕のいい手を探す時間を持っていただきたいんですよね。