クーリングオフとは、一定の条件を満たした契約であれば、締結後でも一定期間内に無条件で解除できる制度です。「家のリフォームにも使えるの?」と意外に思われる方が多いんですよね。外壁塗装工事も例外ではなく、場合によっては行使できる権利になります。
大切なのは、「その契約がどんなきっかけで始まったか」という点です。業者がお客様のご自宅を訪問し、その場で契約に至った——いわゆる訪問販売の形をとっていた場合、特定商取引法に基づいてクーリングオフが使えるケースがあります。期間は、法定書面を受け取った日から8日以内。解除の通知は書面で行う必要があります。手付金や内金を支払っていたとしても、返還を求めることができます。
一方で、お客様ご自身が業者の事務所や展示場に出向いて契約された場合は、原則として対象になりません。「どちらが呼んだか」「どこで契約したか」——この二点が、とても大切な分かれ目になります。
忘れられないお話があります。前職でマッチングの相談窓口を担当していたころ、千葉県にお住まいのお客様からご連絡をいただいたことがあります。
そのお客様は、郵便ポストに入っていたチラシを見て業者に電話をされ、「現地を見ないと正確な金額が出せない」という流れで自宅への訪問を受けたとおっしゃっていました。担当者はその場で「今日だけのキャンペーン価格です」と言いながら見積書を出してきて、「明日になると通常価格に戻ります」と強く勧めてきた、と。お客様は断り切れずその場でサインをしてしまい、翌朝になって「やっぱり他の業者の話も聞いてから決めたかった」と業者に電話を入れたそうです。
そのときに業者から返ってきた言葉が、「あなたから電話してきたのだからクーリングオフは使えません」でした。
ただ、これは一概に正しい説明ではないんです。お客様から業者に電話をしたとしても、業者がご自宅を訪問してそこで契約が成立した場合には、訪問販売として扱われるケースがあります。「連絡したのはこちら側だったから」という理由だけで使えないとは言い切れない場面が、現場では少なくありませんでした。そのお客様には消費生活センターへの相談をお勧めしましたが、もしこの知識を事前に持っていたら——と今でも思います。
「この契約はクーリングオフの対象外です」と業者に言われると、多くのお客様はそのまま受け入れてしまいます。法律の話は難しいし、担当者に反論する気力もなかなか出てこない——その気持ちはよく分かります。サインしてしまったという後ろめたさや、「もうどうしようもない」という諦めが先に立ってしまうんですよね。
ただ、私が見てきた事例の中には、後からクーリングオフが認められたものがいくつかありました。多かったのは、業者が法定の書面——特定商取引法に基づく必要事項やクーリングオフの案内を含む書類——を正式に交付していなかったケースです。この書面が渡されていない場合、8日間の期間がそもそも起算されていないとみなされることがあります。つまり、契約から8日を過ぎていたとしても、場合によってはまだ解除できる可能性が残っていることがあるんです。
受け取った書類にクーリングオフの記載があるかどうか——これだけ確認するクセをつけておくだけで、いざというときに動きやすくなります。後から「あのとき書類を見ておけばよかった」と後悔されるお客様の声を、私は何度も聞いてきました。
「やっぱり解除したい」と思ったときに、最初にやってほしいのは手元にある書類の確認です。業者から受け取った書類の中に、特定商取引法に関する記載と、クーリングオフの案内が含まれているかどうかを確認してください。
消費生活センターへの相談も、早めに動いてほしいと思います。「消費者ホットライン」(188番)に電話すると、近くの相談窓口につないでもらえます。弊社でも話を聞くことはできますが、法的な手続きが絡む場面は専門の機関に頼るのが一番です。
解除の意思を伝えるときは、電話ではなく書面で——ハガキに解除の意思を書いて、書留郵便で送るのが基本です。電話で「解除したい」と伝えても、後から「そんな話は聞いていない」とトラブルになることがあります。送った証跡を手元に残しておくこと、それだけで守れるものがあります。
工事がまだ始まっていないうちに動くほど、解決できる可能性は高くなります。8日間という期間は、気づいたときにはあっという間に過ぎていることも多い。迷ったなら、その日のうちに動いてほしいのです。