外壁塗装の工事が始まると、業者からは「できるだけご在宅ください」と言われることが多いと思います。私も前職で施主と業者のマッチングに携わっていた頃、この一言をお客様にお伝えする機会が本当に多くありました。
ただ、これは業者を疑ってほしいという意味ではないんです。工程が進むにつれて、下地の状態や色の仕上がり、養生の外し方など、その場で見ておかないと後から確認しづらいことがいくつも出てくる。それを写真だけで判断するのは、どうしても難しい部分が残るからなんですよね。だから「立ち会ってください」という言葉の裏には、後悔を減らしてほしいという業者側の気遣いがあることも、知っておいていただきたいと思っています。工事は数週間から一ヶ月ほど続くことも珍しくなく、その間ずっと気を張っているのは、お客様にとっても負担の大きいことだと感じています。
埼玉にご実家があるお客様から、以前こんなお電話をいただいたことがあります。ご本人は仕事の都合で名古屋に単身赴任中で、実家の外壁塗装は、一人で暮らすお母様に任せることになったそうです。工事の内容や色は事前にお子さんが業者と打ち合わせをして決めていたのですが、実際の現場を見られるのはお母様だけという状況でした。
工事が始まってしばらくして、お母様から「今日、足場を外すみたいよ」という短い連絡だけが届いたそうです。それだけでは、色がイメージ通りか、コーキングの仕上がりがどうか、何も判断できません。お客様は仕事の合間に何度も実家に電話をかけ、業者にも連絡を取ろうとしたけれど、なかなかつながらなかったと話してくれました。結局、完成後に現地を確認しに行ったところ、幸い大きな問題はなかったのですが、「あの数週間、ずっと落ち着かなかった」というお言葉が、今も心に残っています。
すべてのお客様が、工事期間中ずっと家にいられるわけではありません。介護、入院、仕事の都合。事情は人それぞれです。だからこそ、契約の前に「立ち会えない期間がある」ことを業者に伝えて、その間の報告のやり方を決めておくことをおすすめしています。
工程が変わるタイミングごとに写真を送ってもらう。鍵の受け渡しや近隣への声かけを誰が担うのか、あらかじめ確認しておく。最近は現場をビデオ通話でつないでもらえるケースもあると聞きます。細かいようですが、こうした取り決めがあるかないかで、離れて過ごす期間の安心感はかなり違ってくるように感じています。契約前のこの一手間を惜しまないでほしいと、私はいつもお伝えしています。
これまで多くの現場を見てきた中で、聞かれる前から報告をくれる業者と、聞かないと教えてくれない業者とでは、お客様の受け止め方が違う傾向がありました。もちろん、連絡が少ないからといって仕事が雑だとは限りません。ただ、離れて暮らすご家族にとっては、その一本の連絡があるかどうかが、信頼につながっていくのだと思います。
先日も、遠方に住むお子さんが、ご両親の家の工事を任されたという相談をいただきました。「毎週金曜に写真を送ってもらう約束をした」と話していて、その一言だけで、ずいぶん気持ちが軽くなったようでした。工事が終わったあと、「離れていても、ちゃんと見てもらえた気がする」と言っていただけたことが、今でも印象に残っています。業界に身を置いて長い年月が経ちますが、こうした小さなやり取りの積み重ねが、お客様の安心につながるのだと改めて感じさせられました。