前職で窓口をしていた頃、契約が終わって着工日が近づいてから「そういえば駐車はどうなるんですか」と慌てて連絡してくださるお客様が何人もいらっしゃいました。工事車両は資材を積んだトラックだったり、職人さんが個人で使う軽自動車だったり、日によって台数も変わります。自宅の敷地に余裕があれば問題にならないのですが、都市部の狭小地や、カースペースが一台分しかないご家庭では、これが地味に大きな悩みになるんですよね。
見積書には塗料や足場のことは細かく書いてあっても、駐車のことまで触れている業者は多くありません。契約前に聞かれなければ、業者側から進んで説明しないことも実際にあります。
愛知県のあるお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。工事初日、業者の車が家の前の道路に停まっていたところ、隣家の方から「うちの車が出せなくて困った」と苦情が入ったそうです。業者に伝えると「すみません、次から気をつけます」で終わってしまい、結局工事期間中ずっとお客様がご近所へ頭を下げて回る羽目になったといいます。
工事する側にとっては数週間の出来事でも、そこに住み続けるお客様にとっては、工事が終わった後も顔を合わせるご近所付き合いのほうがずっと長く続きます。業者が守るべきなのは工程表だけでなく、その土地の暮らしのリズムなんだと、このお話を伺って改めて感じました。
きちんとした業者ほど、近隣にコインパーキングがあれば見積もり段階でその利用を前提に費用を組んでくれます。逆に、そうした費用を見積もりに含めず、当日になって「近くに停める場所がなくて」と路上駐車や、お客様の敷地内ぎりぎりへの駐車を選んでしまう業者もいるようです。
コインパーキング代を数万円ケチった結果、ご近所との関係がこじれてしまっては、何のための工事だったのか分からなくなってしまいます。私はこの業界に長くいますが、駐車場所への配慮の有無は、その業者が現場をどれだけ大切に考えているかを映す、小さいけれど分かりやすい鏡だと思っています。
駐車場所については、契約前に「工事車両と職人さんの車は何台くらいで、どこに停める予定ですか」と一言聞いてみてください。近隣にコインパーキングを借りるのか、その費用は見積もりに含まれているのか。もし路上駐車の可能性があるなら、事前にご近所へ一声かけておくだけでも、当日の空気はまったく違ってきます。
小さな確認かもしれませんが、この一言で防げるすれ違いは意外と多いんですよね。