足場が解体されて、久しぶりに家の外観が全体として見えてくる瞬間。職人さんたちが道具をまとめ、業者の担当者が「お世話になりました」と頭を下げる。そのときのお客様の表情を、私は前職で何度も見てきました。
多くの方が「きれいになった」と感動されます。それはとても嬉しい瞬間なんですが、その感動の勢いで、細部の確認をしないままサインをしてしまうことがある。工事完了の場には「終わった」という空気が流れていて、お客様としては「あれ、ここが少し気になるんだけど…」と言い出しにくい雰囲気になってしまいがちなんですよね。それが、後のトラブルにつながるケースをいくつも見てきました。
前職でマッチングを担当していたとき、工事が完了してから2週間ほど経ったころに、埼玉のお客様からお電話をいただきました。「軒天の一部に、塗り忘れのような箇所があるんですが」というご連絡でした。
完了当日に業者と一緒に家を一周されたそうですが、軒天の裏側まで目が届かなかったとのことで、その場では気づかなかったようです。業者へ連絡はされたものの、「工事完了後のご指摘なので、無償での対応は難しい」という返答があったと聞いて、胸が痛くなりました。長い交渉の末に有償で直してもらうことになり、「あの日、もう少し時間をかけて確認すればよかった」とおっしゃっていたのが、今でも心に残っています。残金をお支払いになる前に一言伝えていれば、交渉の立場はまったく違っていたはずなんです。
私がお客様に強くお勧めしているのが、高い場所の確認です。足場が解体されると、2階まわりの軒天や破風板、屋根際の部分は肉眼では見えにくくなります。足場がある最後のその日に、業者の方と一緒に目を向けておいてほしいのです。
コーキングの仕上がりも、その場で確認できることのひとつです。窓まわりや外壁のつなぎ目に打ったコーキングが均一に収まっているか、浮いたり割れたりしていないか。手が届く範囲は実際に触れて確かめることもできます。
色むらというのも気になる点のひとつです。仕上がったばかりは艶があって全体的にきれいに見えますが、逆光や斜めからの光の角度で見てみると、微妙な塗りの差が分かることがあります。曇り空の日のほうがかえって均一性を確認しやすいこともあって、完了日の天気で見え方が変わるというのも覚えておいてほしいことのひとつです。
誠実に仕事をしてくれた業者であれば、完了時の確認を歓迎するものです。私の前職の経験でも、お客様からの信頼が厚い業者ほど、自ら「一緒に回ってみてください」と声をかけていました。気になることがあれば、その場で「ここはどうですか」と聞いてみる。それだけで業者の誠実さが伝わってくるんですよね。
「問題ないです」と一言で終わらせるのか、ちゃんと見て丁寧に説明してくれるのか。その態度が、工事後のアフター対応にもつながっていくように思います。
もし気になる点があれば、残金のお支払いは「補修確認後」という流れにすることが、お互いにとって誠実な取引だと思っています。それは決して失礼なことではないし、良心的な業者であればそのことを理解してくれるはずです。お客様には、払う前のその一歩を、どうか面倒くさがらずに踏み出してほしいと思っています。