外壁塗装というと、多くの方はご自宅をきれいにするための工事だとお考えだと思います。でも実際に足場が組まれた瞬間から、その工事は近所の方たちの生活にも入り込んでいくんですよね。特に小さなお子さんがいるご家庭が近くにある場合、その存在を意識できているかどうかで、工事の印象がまるで変わってくることを、私は前職の窓口業務で何度も見てきました。
足場というのは、大人からすれば単なる仮設の骨組みですが、子どもの目には格好の遊び場に映ることがあります。よじ登ってみたくなったり、隙間をくぐり抜けてみたくなったり。工事現場の職人さんたちは当然目を光らせてくれますが、四六時中見ているわけにはいきません。工事が始まる前は気にも留めなかった小さな路地が、足場という非日常の景色をきっかけに、子どもたちの好奇心を集めてしまうこともあるのだと思います。
長野県にお住まいのお客様から、以前こんなお電話をいただいたことがあります。ご自宅の外壁塗装が始まって数日経ったころ、隣家のお子さんが足場の下で遊んでいるのを見つけて、肝を冷やしたというお話でした。幸いけがはなかったそうですが、もし塗料の入った缶が落ちていたら、もし脚立が倒れていたらと考えると、夜も眠れなかったとおっしゃっていたのを覚えています。
そのお客様は工事の前に近隣へ挨拶回りをされていました。それ自体はとても丁寧な対応だったと思います。ただ、挨拶の中身が「工事期間中、音や車の出入りでご迷惑をおかけします」という一般的な内容にとどまっていて、足場周辺で遊ばないようお子さんに伝えてほしいという具体的なお願いまでは踏み込めていなかったんですよね。挨拶回りは形だけでなく、伝える中身まで意識してこそ意味を持つのだと、そのお話から改めて感じました。
足場を組む業者によって、養生や施錠の丁寧さには差があります。契約前に確認しておいていただきたいのは、足場の昇降口に施錠や外側カバーがされるか、資材や塗料の缶を作業終了後どこに保管するか、という点です。特に子どもの手が届く高さに脚立や道具が放置されていないか、工事の初日だけでなく、数日おきにご自身の目で見ておくと安心だと思います。
業者側に「近所にお子さんの多い地域なので、施錠や片付けを徹底してほしい」と一言伝えるだけで、現場の意識は変わります。私が話を聞いてきた業者の中でも、対応が丁寧なところほど、こうした申し出を嫌がらず、むしろ教えてくれてありがとうございますと受け止めてくれる印象があります。
逆に、こちらの申し出に面倒くさそうな態度を見せる業者は、他の面でも配慮に欠けることが多いように感じます。小さなやり取りの中にこそ、その業者の姿勢が表れるものなんですよね。休日で作業が止まっている日も、足場や資材はそのまま残っています。誰もいない日こそ、施錠がされているか気にかけていただきたいと思います。
近隣への挨拶回りというと、工事の音や振動、車両の出入りについて説明することが中心になりがちです。ただ、実際にお客様のお話を伺っていると、トラブルの芽は子どもや高齢者がふだん通る動線に工事の資材や足場がかぶってしまうところにあることが多いように思います。
通学路になっている路地の脇に資材を積み上げてしまったり、いつも近所の子が集まる駐車場の一角を足場の設置場所にしてしまったり。工事をする側にとっては一時的なことでも、毎日そこを通る子どもたちにとっては、見慣れない光景が数週間も続くことになります。挨拶回りの際に、ふだんお子さんが通る道はどのあたりですかと一言尋ねるだけで、業者側の配置計画にも余裕が生まれるはずです。
工事が終わって足場が外れたとき、近所の方から「気をつけてくれてありがとう」と声をかけてもらえたら、それはご自宅がきれいになったこと以上に、この土地でこれからも暮らしていく上で大きな財産になるはずです。